1992 Fiscal Year Annual Research Report
多庫原子価酸素酸イオン分析法の確立と自然界への適用に関する研究
Project/Area Number |
04640549
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
桑本 融 京都大学, 理学部, 助教授 (10025281)
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Keywords | タングステンの分析 / バナジウムの分析 / モリブデンの分析 / 酸素酸イオン / イオンクロマトグラフィー / クエン酸 / α-ヒドロキシカルボン酸 / ニトリロトリ酢酸 |
Research Abstract |
タングステン、モリブデン、バナジウム等の元素は、水溶液中で、水和縮合、酸素酸を形成し、アルカリ性溶液で單量体イオン、中性から酸性になるに従って、多量体化し、濃度に応じて、各種のイソポリ酸を形成する。その上、強酸性溶液中で、金属イオン、酸素酸イオンが共存すると、これらをを取込みヘテロポリ酸を形成する。以上の如く、これら三元素は、溶液の状態によって、複雑な化学種を形成するため、分析定量を試みるさい、溶存化学種を基礎的に検討することが必須の課題であった。以上のような理由で、本研究では、これら酸素酸イオンの存在状態を明らかにするとともに、陰イオンクロマトグラフイーを用いて溶離の基礎検討を行ない、これら酸素酸の分析法を確立することを目的とした。 ダングステン、モリブデンは、アルカリ性溶液では、安定な二価の酸素酸イオンを形成するため、両イオン間の保持比は、溶離液の種類、pHの変化に係わらず顕著には変化しない。また、酸性、中性溶液中では、イソポリ酸生成により平衡があり、カラムに強く吸着するので、過塩素酸、硫酸などの無機酸、あるいはフタール酸などの有機酸では、これら元素を、溶離することができなかった。しかし、l-酒石酸、クエン酸などのα-ヒドロキシカルボン酸では、これら元素と錯イオンを生成するとともに、イソポリ酸形成を抑制するので、全pH領域において、両元素の錯イオンを溶離することが可能であることを見いだした。α-ヒドロキシカルボン酸の種類によっては保持比が異るが、クエン酸が最も有効であり、これら元素の酸素酸の同定と分析が可能になった。一方、バナジウムは以上の二者と異なり、ニトリルトリ酢酸を溶離剤に用い溶離が可能となることを、始めて見いだし、現有、定量法の確立のための基礎検討を継続中である。また、自然水への適用についても検討を進めている。
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