1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04660021
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
筒井 澄 北海道大学, 農学部, 教授 (90155416)
|
Keywords | ラン / 菌根菌 / 共生 / 安定化 / 窒素栄養 / 可溶性窒素 / 不溶性窒素 / 寄生性 |
Research Abstract |
ネジバナとこれに有効な2核リゾクトニアNo.706菌株の共生培養において、培地に添加する基準窒素濃度を9meとして、窒素源の種類が実生の生育に及ぼす影響を検討した。 セルローズを炭素源とし、各種のアミノ酸を窒素源とすると、アミノ酸の種類によって程度の差はみられたものの、いずれも無機熊窒素に比べて著しく実生の生育を抑制し、葉が褐変し枯死するに至った。 エンバク熱水不溶性成分に、可溶性有機態窒素源としてアルブミンの量を変えて添加した共生培養においては、無機態窒素は倍量添加しても悪影響は見られなかったが、アルブミンは1/2量では実生の生育が促進されたのに、標準量では実生の葉に褐変が現れ始め、2倍量では著しく生育が抑制されすべての葉が褐変し、1割以上が枯死した。 炭素源としてイヌリン、不溶性有機態窒素源としてグルテンの添加量を変えて効果を比較した。グルテンは低濃度では、無機態窒素に比べて実生の生育が優れたが、濃度が高くなるにつれて生育が抑制され葉の褐変を示す個体の割合が増加した。 これらの事実から、アミノ酸を含む可溶性および不溶性の有機態窒素は、共生培養における窒素源としての効果は無機態窒素よりかなり高いが、培地中の濃度が高くなるにつれ、実生の生育に対する害作用が大きくなることが示された。このように、エンバク培地のエンバク濃度が高い場合に起こる害作用には、それに含まれる有機態窒素が関係すると考えられた。このような、ラン・菌共生の寄生性への傾斜に炭素栄養が関係するとするこれまでの説は支持されなかった。 培養過程において採取・貯蔵したプロトコームおよび実生について、ラン組織内の菌の状態や窒素成分について調査・分析中である。
|