1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04660021
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
筒井 澄 北海道大学, 農学部, 教授 (90155416)
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Keywords | ラン / 菌根菌 / 共生 / 安定化 / 寄生性 / 窒素栄養 / 可溶性窒素 / 不溶性窒素 |
Research Abstract |
前年度の検討によって、ラン共生培養でみられる培地養分過多による生育障害は、主として有機態窒素に原因があることが確認されたので、さらにイヌリン1%を炭素源として、有機態窒素源としグルテン濃度を20mgl^<-1>および50mgl^<-1>にとり、有効性が確認されているリゾクトニア3菌株を用いて、生育障害発生とラン・菌の窒素含有量およびプロトコーム組織内の菌の分布の変化との関係を調べた。 培地グルテン濃度に対するラン実生の生育反応は、菌株により明瞭な差がみられ、グルテン濃度の増加によって実生生鮮重が著しく減少するもの、その減少程度の小さいもの、この濃度ではまだそれほど影響のでないものなどがみられた。また、これら実生の生育への影響が大きいものほど、葉の褐変、プロトコームの枯死などの障害が強く表れた。これらの障害が強く表れたものでは、実生の窒素濃度が高まり菌体の窒素濃度は減少した。これら障害の発生と菌の生育との間には直接的関係はみられず、菌の過繁茂により実生の生育が圧倒されるのが障害の原因とする従来の説は支持されなかった。 プロトコーム組織の顕微鏡観察の結果、障害の発生しない正常な培地有機態窒素濃度では、プロトコームへの菌感染部位は下部1/2以内で安定し、維管束がよく発達しシュートの伸長、根の分化・伸長が急速に進むという共生が持続した。これに対して、障害が認められるようなものは、プロトコームの菌感染部位が維管束を残しこれを押上げるような形で急速に拡大し、未感染部位が縮小するため多くは根が分化するに至らず、シュートは先端から褐変し始める。ついには、菌感染部位はプロトコーム全体に及び、やがて感染部位の菌は消失しプロトコームは枯死褐変に至る。この所見は、本障害が明から寄生への変化であることを示した。
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