Research Abstract |
CO_2の植物成育に対する作用を究明するために,環境因子としてのCO_2の影響を大きく受けていると考えられる種子バーナリゼーションを取り上げ,そのCO_2による調節について研究を実施した。まず,1,2年生植物とされるErigeron canadensis,および2年生であるE.sumatrensisの栽培実験の結果,前者が1年以内に発芽〜開花,結実するためには,種子が冬期の低温に遭遇する必要があったが,後者は種子の低温遭遇の有無によらず開花,結実が越年したことから,1年生,2年生といった植物生活史の進化において埋土種子におけるバーナリゼーションの重要性が示された。そこで以後,発芽直後のダイコン(Raphanus sativus)種子に閉鎖系で低温,およびCO_2を与え,その後温室にて栽培し,出蕾日数を調査する実験系によって,種子バーナリゼーションに対するCO_2の影響を検討した。出蕾日数でみたバーナリゼーションの程度は,低温期間中の外囲CO_2濃度の増加に伴って抑制されたが,CO_210%以上においては成長の指標とした新鮮重増加,O_2吸収速度が大きく低下し,高濃度CO_2では,成長阻害がバーナリゼーション抑制の原因であると考えられた。しかし,CO_2による新鮮重,O_2吸収低下が無視できる350〜700mOsmの水ストレス条件下,及び低温処理期間が5乃至10日の場合においても,CO_20%に比較し,CO_23%でバーナリゼーション抑制が顕著に認められ,低濃度CO_2におけるバーナリゼーション抑制は成長差に起因するものではないことが明らかとなった。さらに,CO_23%でのバーナリゼーション抑制は,吸水後の未発芽種子,あるいは2.0葉期の植物体についても認められ,本研究においてなされるであろうCO_2によるバーナリゼーション調節解明の進展は,野性植物の埋土種子におけるバーナリゼーション調節,低温貯蔵苗のバーナリゼーション調節といった生態学上,あるいは農学上の問題にも演繹できることが示唆された。
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