1994 Fiscal Year Annual Research Report
高崎山のニホンザルに採食される木本性植物の分布と季節的変化
Project/Area Number |
04660039
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Research Institution | Oita Junior College |
Principal Investigator |
長岡 寿和 大分短期大学, 園芸科, 講師 (70105211)
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Keywords | 高崎山自然動物園 / 森林保全 / 野生ニホンザル / 樹木の季節的変化 |
Research Abstract |
平成6年度は北側斜面のクスノキについて分布と樹冠の被害状況を調査した。平成2年までに北東側斜面(B群遊動域内)では樹高10m以上のエノキやムクノキの大木がニホンザルの採食により枯死した。その後周辺の樹高約15mのクスノキに被害が顕著になってきた。現在(1994年)、15本のクスノキは花も咲かず実もつけない状態で枝が枯れ始めている。樹冠も小さくなり、新葉の展開も遅れ、枯死寸前と考えられる。ニホンザルに大量に採食され被害を受けた樹種はイヌビワからエノキ・ムクノキそしてクスノキ・クマノミズキ・アラカシと変化している。平成6年度ではB群の遊動域内にイヌビワは見つからず、エノキ・ムクノキも枯れた木ばかりである。エノキやムクノキのニホンザルによる採食被害の課程から考えれば、現在のままの状態をつづければ今後2〜3年でクスノキは枯死すると考えられる。 また、昭和62年から高崎山の木本性植物の季節的変化の観察を継続中であるが、今年度はこれによって得られた定期的な季節的変化のデータ入力・まとめや写真撮影した資料を整理、分析を始めた。 森林を保全するためには基本的な問題点として高崎山の野性ニホンザルの個体数の変動と餌の給与量の関係がある。現在は、観光施設の「寄せ場」で与える餌を少なくすることによって個体数をわずかながら減少させることに成功している。しかし、このために寄せ場周辺の森林がニホンザルの不足分の食物供給源として過度に利用され、前述のような被害がでている。このままでは森林の荒廃化は避けられない状態となっている。 貴重な野生ニホンザルの生息地である高崎山自然公園内で、森林保全と野生ニホンザルの適正な頭数の保護管理のためには、今後さらに森林内に調査区を増やして次代の森をつくる方法を考えることや森林の季節的変化の継続的な定期観察は不可欠である。
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