1992 Fiscal Year Annual Research Report
脳薄切切片におけるてんかん様発作波の発生機序に関する電気生理学的研究 (副題)発作発射に対するアデノシンの影響
Project/Area Number |
04670847
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
小島 壽志 秋田大学, 医学部, 助手 (40186680)
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Keywords | てんかん / 脳薄切切片 / マグネシウム / アデノシン / 発作波 / 発作間波 / 海馬 / 内嗅領 |
Research Abstract |
ラット海馬/内嗅領切片をMgイオンを含まない(0-Mg)人工液で灌流すると、細胞膜表面価電の減少やMgイオンによるNMDAレセプターチャネルのブロックの解除により、痙攣性発作発射(以下発作波)が観察される。しかし、この発作波は一過性で、最終的には持続時間の短い発作間波によって置換される。私たちはこの0-Mg痙攣モデルにおいて、低酸素下では海馬CA3領域の発作間波が抑圧されて内嗅領の発作波が再現することを報告した。本年度は、この機序を解明する目的で、低酸素時に脳内に増加して細胞活動を抑制するとされるアデノシンの作用について検討した。 まず、生後25-35日齢のSprague-Dawleyラットから500-550μm厚の海馬/内嗅領切片を作製し、海馬CA3領域および内嗅領にガラス微小電極を刺入して細胞外記録を行った。細胞外灌流液を標準液から0-Mg液に変更すると、両領域において自発性の発作波が観察されたが、一定時間(20-80分)後に発作間波によって置換された。完全に発作間波の相に移行した段階で、50-100μMのアデノシンを0-Mg灌流液に加えて、両領域における反応を比較検討した。 その結果、全33切片で、アデノシンにより海馬CA3領域の発作間波は抑圧されて、その発生周波数が低下した。一方、内嗅領ではCA3の発作間波による影響から解放されて、28切片(85%)で発作波が再現した。一部の切片(n=10)では、内嗅領の再現発作波に伴ってCA3でも発作波が観察された。 以上より、海馬/内嗅領切片・0-Mg痙攣モデルにおいて、低酸素により海馬CA3領域の発作間波が抑圧されて内嗅領の発作波が再現する機序のひとつとして、アデノシンが関与している可能性が示唆された。
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