1992 Fiscal Year Annual Research Report
顎裂部に移植した骨組織の歯の移動に伴う変化に関する組織学的研究
Project/Area Number |
04671269
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
八木 實 岩手医科大学, 歯学部, 助手 (40112601)
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Keywords | 唇顎口蓋裂 / 骨移植 / 腸骨海綿骨細片 / 歯の移動 |
Research Abstract |
【目的】唇顎口蓋裂患者の顎裂部へ歯を排列することは不可能であったが、同部へ自家腸骨を移植することにより隣接歯の移動や犬歯の萌出誘導が可能となった。これらの多くは臨床報告であるため、移植骨の経過はX線写真による評価のみである。本研究はこの点について、移植骨と顎裂部歯槽骨との骨の結合状態を観察し同時に、同部に歯を移動した場合の歯周組織の変化について検討することを目的とする。【研究方法】1,雑種成犬を用い3群で実験を行う。1群:上顎第4前臼歯部に顎裂形成後、同部位に自家腸骨海綿骨細片を移植し、その後第3前臼歯を移動する。2群:1群と同様の処置後、自家腸骨ブロック片を移植しその後1群同様に第3前臼歯を移動する。3群:第4前臼歯抜歯後、同部位に第3前臼歯を移動する群。2,実験開始後3カ月で屠殺し、骨移植部および第3前臼歯周囲の組織標本(脱灰、非脱灰)を定法に従って作製し光顕下にて観察する。3,屠殺までの経過観察は歯科用口腔内X線写真を用いる。 【結果】移植骨部の経過は、1群では骨架橋形成は2カ月以降に認められ、3カ月には移植骨部は周囲の骨と同様のX線像(骨梁構造)で、歯槽頂縁に皮質骨様の境界が部分分的に現れた。それに対し2群は、術後2カ月で植移骨ブロック片に改造変化は認められたが骨架橋形成は明瞭ではなく、3カ月では移植骨部の骨梁構造が周囲の骨とは若干異なり歯槽頂縁には皮質骨様の境界は認めなかった。移植骨部への第3前臼歯の移動は術後3カ月より行った。約1カ月の移動後組織標本を作製し組織変化を観察した。1群の移植部の線維性組織では毛細血管が多く認められ、歯の移動に伴う歯根周囲の変化は3群に類似していた。2群の移植部の線維性組織での毛細血管は1群に比べて少なく、骨吸収像が認められた。今後は移植骨を腸骨細片とし成長期の犬を用い、歯列の成長への影響や歯の移動による移植骨周囲の変化について検討したい。
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