1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04671281
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
遠藤 勝也 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (50004429)
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Keywords | チロシン / プロリン / アミノ酸 / パラキノール / 光増感酸化 / 酸化的脱炭酸 / ジエノンフェノール転位 / 3.3-シグマトロピー転位 |
Research Abstract |
チロシンのアルカリ性水溶液にローズベンガル等の光増感剤を加え、酸素ガスを通気しながら光照射すると、ゆっくりと酸素化反応が進み、最終的に炭素原子1個が脱炭酸の形で失われたラクタムを生ずる。一方、N-BOC-チロシンの場合は途中のピロリジンカルボン酸の段階で反応が停止すること、またこれと同じ部分構造をもつプロリンでは増感剤が窒素原子から電子を引抜くI型の光酸化で脱炭酸反応を来たすことなどが知られた。従ってこれらの知見から、チロシンの光増感酸素化反応は次のような極めて複雑な過程で進むという結論に達した。 チロシンの光増感酸素化の反応過程 1.増感剤の光励起 2.励起型増感剤からのエネルギートランスファーによる酸素分子の活性化 3.活性酸素(一重項)によるフェノールの酸素化 4.生成したキノールヒドロペルオキシドのピロリジンカルボン酸ヒドロペルオキシドへの閉環 5.ヒドロペルオキシドのヒドロキシドへの還元 6.増感剤によるピロリジンカルボン酸の窒素原子からの電子引抜き 7.協奏的な脱炭酸によるピロリンの生成 8.ヒドロペルオキシドの光分解によるヒドロキシラジカルの生成 9.ヒドロキシラジカルとピロリンの反応によるラクタムの生成 このような反応過程が物質レベルで解明された例は少なく、またこの結果はアミノ酸の化学的性質の理解に大きく貢献するものと思われる。なお一次生成物のパラキノールのアセテートを加熱すると、1.3-転位による異性化でカテコール誘導体となることが知られた。この異性化は神経伝達物質であるドパやエピネフリン等の生体内カテコールアミン類やポリヒドロキシ芳香族化合物の生合成反応と関連していることも考えられるので、今後更に検討する予定である。
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Research Products
(2 results)