1993 Fiscal Year Annual Research Report
バターミルクに含まれる新しい糖含有リン脂質の構造と生理活性
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04680063
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
大橋 昌子 お茶の水女子大学, 生活環境研究センター, 教授 (10090507)
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Keywords | 糖含有リン脂質構造 / ミルクリン脂質組成 / バターミルクリン脂質 / ラクトース・フォスファチジルエタノールアミン複合体 |
Research Abstract |
本研究は、当研究室で発見したバターミルク中の未知の糖含有リン脂質について、(1)その化学構造の解明、(2)このような糖含有リン脂質が一般の市販ミルク製品にどの程度存在するか免疫染色法での定量分析、また本物質の起源の追求、(3)培養細胞を用いて本リン脂質の生理活性の解明、以上の3点を目的とした。 これまでの成果として、(1)バターミルクから分離したこの糖含有リン脂質は、主として赤外吸収、FAB-MSイオン解析、分子量、および酸加水分解による生成物のGC-MS分析の結果から、リン脂質の一種であるフォスファチジルエタノールアミン(PE)とラクトースが脱水縮合した形の化学構造を有することが判明し、一種のアミノカルボニル反応による生成物であると考えられた。(2)この物質が一般の市販乳製品にどの程度含まれるかを検討するため、予め本物質に対する抗体を作成し、これを用いて粉ミルク3種、練乳2種、牛乳6種、加工牛乳3種の脂質画分について、薄層クロマトグラフ-免疫染色法により分離定量を行った。その結果、粉末状のミルクや練乳では糖含有リン脂質が総リン脂質量の4〜6%と比較的高い値を占めたが、一般の牛乳では0.5%と低い含量であることが判った。また加工乳は約1〜3%含み、雪印アカデイ牛乳が飲用牛乳の中で最も高い値を示した。以上の様に粉ミルクや加工乳に多く存在する事実から、この糖含有リン脂質はミルクの加熱・濃縮処理で起こる生成物であると考えられた。本研究では実際に種々の濃度の牛乳を120℃で加熱することを試み、時間とともに本物質が生成増加すること、また同時にリン脂質組成が変わり特にPE量が低下することを明らかにした。(3)最後に、培養細胞を用いての生理活性の検討に当たり、本リン脂質が不足となり再調製する必要が生じた。今回は大量のスキムミルクからの分離精製を試み、現在、十分量の試料が準備できた段階である。今後これを培養細胞に種々の条件で投与し細胞増殖率・細胞変化を観察する予定である。
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