1993 Fiscal Year Annual Research Report
ソウルオリンピック開催の背景と韓国国家発展に及ぼした影響に関する研究
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04680146
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
藤原 健固 中京大学, 体育学部, 教授 (60065216)
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Keywords | ソウルオリンピック / 国際政治構造 / オリンピックの機能 / 北方政策 / 共同開催 / 対共産圏(社会主義圏)貿易 / 国民意識 / 国内融和 |
Research Abstract |
平成4年度の研究実績によって得られた枠組に基づき,更に研究を深めた結果,次の5点の知見が得られた。 (1)ソウルオリンピックは東西の緊張した国際政治構造の枠組の中に位置づけられたこと。その中に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)とのあつれさがみられた。それは共同開催の可能性を軸にすすめられたが結実しなかった。しかし,ソビエト,中国を中心とした北方政策は結実した。 (2)ソウルオリンピックの開催は,韓国にとって国家の命運を賭けた一大事業であったこと,それが国内の秩序形勢に機能し,東側陣営接近までも可能にした。 (3)ソウルオリンピックの開催は,韓国に,主として,次の効果をもたらしたこと。 〓政治的効果 国の内外に対し連帯・結束を可能にし,従来の政治手法では得られなかった機能を果した。 〓経済的効果 開催準備の過程に巨大土木工事が位置づけられ,また,開催に伴う効果が得られた。それは国内におけるオリンピック効果であり,対外的には主として東側諸国との貿易の認可・拡大であった。その結果,飛躍的経済発展をオリンピック開催はもたらしたと言える。 〓社会・文化的効果 国民の自覚とプライドを高め,また諸外国の文化・芸術を紹介し,韓国文化の向上に資した。 (4)以上のことから,オリンピックという一大イベントのもつスポーツ以外の側面に及ぼす機能を認めることが可能であること。その可能性のために国家が命運を賭けた姿を認めることができる。 (5)しかし、ソウルオリンピックの開催による効果は,多分に一時性に満たしており,その持続性はその国自体の本質的なアビリティに収練するものと考えられること。しかしながら,この仮説は,更に他の事例を究明することによって検証をやる必要がある。 以上の知見は,従来のスポーツ社会学におけるこの種の研究に新しい知見を加えるものである。
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[Publications] 藤原健固: "ソウル五輪開催の背景と韓国国家発展に及ぼした影響に関する研究(1)-第二次世界大戦後における政治的経済的被利用価値としての五輪とソウル大会の位置-" 社会科学研究. 14-1. 41-80 (1994)
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[Publications] 藤原健固: "ソウル五輪開催の背景と韓国国家発展に及ぼした影響に関する研究(2)-南北関係に及ぼしたソウル五輪の政治的機能-" 社会科学研究. 14-2. 75-106 (1994)