1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04801009
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岩井 瑞枝 富山大学, 人文学部, 講師 (00223363)
|
Keywords | フォンテーヌブロー派 / 祭礼 / 宗教戦争 / カトリーヌ・ド・メディシス / エンブレム / タイポロジー |
Research Abstract |
すでに報告した通り、本年度は、16世紀フランスのフォンテーヌブロー派の活動は、当時の、すなわちヴァロワ朝末期の宮延祭礼への彼らの関与の詳細や動機を全体史的な視野から考察することによってより明確に把握し得る、という観点に立って研究を進めることにした。 アントワーヌ・カロンは、第1次フォンテーヌブロー派(1530-1571)と第2次フォンテーヌブロー派(1589-1619)とを隔てる宗教戦争による混乱の時期に、カトリーヌ・ド・メディシスに寵愛されて活躍した宮延画家である。カトリーヌの夫君アンリ2世、そして彼女の息子たちであるフランソワ2世、シャルル9世、アンリ3世というヴァロワ朝末期の国王たちに仕えたカロンの作品は、ほぼすべてが当時の宮延で挙行された祭礼の諸舞台を描いたものであった。本年度は、このカロン代表作であり、パリで挙行されたある祭礼の舞台を表した『アウグストゥス帝とティブルのシビュラ』(1580頃)についての論文を執筆したが、この作品には、カトリーヌとアンリ3世も登場しており、カトリーヌが推進する旧教派諸侯と改革派諸侯の政治的宥和政策と、それによってアンリ3世が実現するはずの,宗教戦争の脅威が消え去り、統一され、平和がもたらされた未来の王国の幻影を示されていると考えられるのである。この論文では、初期キリスト教が古代世界を理解し、それを継承するための、もしくはそれと混淆するための理念であり方法論であったキリスト教的タイポロジー(予表論)が、宗教戦争の時代に再び、聖母とキリストに遡る王国の聖なる系譜のみならず、王権の望む王国の未来を予表する役割を担うもとのして、すなわち王権のイデオロギーを媒介するものとして機能しているという、本研究の大枠を提示したつもりである。 来年度は、さらにマイクロフィッシュによる史料解読を進め、フォンテーヌブロー派と宮延祭礼についての論文を執筆の予定である。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 岩井 瑞枝: "「ピエール・ヴォエリオ版刻『ジョルジェット・ド・モントネーのキリスト教的百エンブレム集』(1571)ー宗教的プロパガンダとしてのエンブレム」" 版画史研究. 1. 76-114 (1992)
-
[Publications] 岩井 瑞枝: "「アントワーヌ・カロン〈アウグストウス帝とティブルのシビュラ〉(1580頃)」『名画への旅』第10巻.104-119頁" 講談社, 152 (1992)