1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04801025
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
倉橋 重史 佛教大学, 社会学部, 教授 (90067835)
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Keywords | 知識 / 知識社会学 / 科学社会学 / 日常知 / 常識 / 遊び / 庶民 / 伝承 |
Research Abstract |
本研究は日常知を社会学的に解明するための、一つの手がかりとして「いろはかるた」をとりあげた。まず第一に、ここで何故「いろはかるた」を社会学的に研究するのか、その理由と目的を述べ、第二に知には体系的、科学的な知識と非体系的な知とがあることを指摘し、第三として何故「いろはかるた」が日常知といえるのかを問い、第四として日常知の構造を、そして第五に、その種類を問い、最後に「いろはかるた」の社会学的意味を考察した。最後の考察は平成5年度へと継続する研究の方向を示す意味を有している。 以上から判明した点を挙げると、1)「いろはかるた」は体系的・論理的な知識ではないこと、2)それは制度的な教育機関を通じて学ばれた知識でもなく、3)かるた遊びとして、インフーマルに、いわば人々が自然発生的に仲間と遊ぶことを通じて習得した知であること、4)しかもその知は長い世代を通じて語り伝えられ、5)日常の会話に多く使用されており、6)その内容からは徒労を述べた民衆の無抵抗な姿勢とともに、民衆の側にたって支配階層、知識人等を風刺し、批判する句が見いだせるという点から、それは民衆の側から自分達をふくめて、社会を映す鏡として機能しているといえること、7)したがってそれは民衆が社会を捉えるレンズとして捉えることが判明した。そのような知はまさに日常知といえる。それは句が冗長でなく、簡潔にして要を得ており、その内容が民衆に云わんとする心理を代弁するものが多く、ある面では庶民が社会を見る疑似社会学的な視点を提供するものであるといえる。来年度は以上の知見に基づいて、6)で指摘した「いろはかるた」の各々の句に関する研究を行い、その日常知性を見い出したい。
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Research Products
(1 results)