1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04801040
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Research Institution | Sapporo University Women's Junior College |
Principal Investigator |
原田 信男 札幌大学女子短期大学部, 教授 (20208680)
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Keywords | 関東平野 / 中世村落・考古遺物 / 村落景観 |
Research Abstract |
今年度は、最終年度でもあることから、関東平野の中世村落を幅広く見聞して知識を深めるとともに、これまで推論の域に止まつていた類型論の一部を、具体的に検討するめの調査を行つた。まず具体的な調査地を選定するため、これまでのフイールドである茨城県県西地域と東京都日野・八王子地域、さらには新たに埼玉県県南地域の巡検を実施し、中世村落の痕跡の確認を行つた。また生活史と景観論の相関を見るため、山梨県河口湖町の木立地区の調査を行つたが、中世に飢饉などの災害が頻発しているこの地区では、耕地に恵まれず、富士山麓の雪解け水などで災害を受けやすい立地条件にあることが確認され、景観が生活に大きな影響を及ぼすことなどが理解された。なお今年度はより確度の高い村落景観の復原という観点から、中世文書を有する地域における調査に重点をおいた。今年度最大の問題としては、茨城県結城市の毛呂地区において、広く浅い谷田を考古学的な観点から検討するため、緻密な表面採取調査を実施した。毛呂郷は『金沢文庫古文書』にしばしば登場する中世村落で、集落を巡る溝の問題をも含めて興味深い地域である。その中心をなすと考えられる谷田の周辺を、精密な表面採取によつて、可能な限り遺物を収集を行つた。遺物散布の分析からは、意外に谷頭の開発が遅く、むしろ台地部の谷田に面した部分のほうが古くから開発が進んでいる事が判明した。また中世毛呂郷の集落範囲もほぼ明かとなり、水田の利用形態についても一応の具体的なイメージが、考古遺物という物証に拠つて描けるようになつた。これまで調査・研究により、従来は推測の域を出なかつた浅くて広い谷田型の景観の実態が解明されるなど、中世村落の景観研究において、かなりの具体的な成果を挙げ得たものと考える。
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