1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04801047
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
古瀬 清秀 広島大学, 文学部, 助手 (70136018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤野 次史 広島大学, 文学部, 助手 (20144800)
中越 利夫 広島大学, 文学部, 助手 (80144799)
佐竹 昭 広島大学, 総合科学部, 助教授 (00127656)
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Keywords | 鉄滓 / 製錬 / 鍛冶 / 椀形滓 |
Research Abstract |
平成5年度における本研究は、実際の古代遺跡出土の鉄滓、主として関東地方周辺の遺跡出土鉄滓と現在の鍛冶工房などから採集された鉄滓の比較を重点的に実施した。関東地方周辺では千葉県・福島県地方出土の鉄滓を中心に収集し、現在の鉄滓資料は千葉県房総風土記の丘資料館で実施した製錬・鍛冶実験炉のもの、岡山県備前長船刀剣博物館鍛刀場のものを用いた。 この結果、大筋では平成4年度に考古学的に型式設定して分類した通り、製錬と鍛冶の工程では形態的に相当に異なり、特に鍛冶に伴うものは精錬工程ではいわゆる椀形滓(大形)、鍛錬工程では椀形滓(小形)が主体をなすことがほぼ間違いなく確められた。 但し、同時に、遺跡出土鉄滓、現在の鉄滓いずれも椀形をなさずに拳大までの塊状を呈するものも多く生成されることもわかった。つまり、作業工程の途中での滓の取出しが行われたりすることによって、冷却固化するまで放っておき、椀形滓として形成される以前に塊状のまま取出されると考えられる。こうした塊状鉄滓の生成状況の考古学的理解が今後の大きな課題となってきたといえる。 本研究の成果の大きな意義は、これまで考古学的には軽視されがちだった産業廃棄物としての鉄滓を考古学的方法論によって、重要な考古学資料として利用できることを明らかにしたことにあるといっても過言ではなく、鉄滓の研究が鉄及び鉄器の生産研究に大きなしかも新たな研究の方向性を与えたといえる。
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