1992 Fiscal Year Annual Research Report
繊維芽細胞の不死化・老化に関わる遺伝子の細胞生物学的研究
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04836025
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
杉本 喜憲 理化学研究所, 分子腫瘍学研究室, 常動嘱託 (10101940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RENU Wadhwa 理化学研究所, 分子腫瘍学研究室, 常動嘱託
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Keywords | 細胞老化 / 老化遺伝子 / mortalin / 熱ショック蛋白質 |
Research Abstract |
私たちは、老化・不死化のマーカータンパク質p66を単離し、既に、その抗体を作成していたが、本年度は抗体を用いたイムノスクリーニングを行い、cDNAの配列を決定して、老化のメカニズムの解明に寄与することを試みた。 まず、正常なマウス繊維芽細胞のmRNAを抽出し、cDNAライブラリーを調製した。抗p66抗体を用いてスクリーニングしたところ、3種のcDNAクローンが得られた。これらは互いにオーバーラップしており、in vitroトランスレーション実験からもp66をコードするcDNAであることが証明された。さらに、p66cDNAをプローブにして上流をカバーするクローンの解析から、open reading frameが明らかになった。ホモロジーサーチの結果、熱ショックタンパク質hsc70ファミリーに属する新規の遺伝子であることがわかった。 この遺伝子の生物活性が老化とどのように関係しているかを調べるため、私たちは、つぎのような実験を試みた。(1)老化させた正常繊維芽細胞へ抗p66 IgG抗体をマイクロインジェクトしたところ、分裂を停止し巨大化していた老化細胞が48時間以内に紡錘状の形態をした若い細胞として振る舞うようになり、分裂するようになった。しかし、この効果は一時的で6日後には、再び、老化細胞に戻った。したがって、細胞の若返り現象は抗体によって引き起こされることがわかった。(2)つぎに、p66 cDNAを発現ベクターに組み込んで、不死化繊維芽細胞で発現させた。発現の見られた細胞クローンは、例外なく老化細胞の形態に変化し、分裂能を失い、死に至った。(1)(2)の結果から、この遺伝子は、老化のプロセスにおいてきわめて重要な役割を演じていることがはっきりしたので、mortalin(mot-1)と命名した。今後は、mot-1の役割を更にくわしく調べてゆくつもりである。
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