2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04F03909
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古田 和子 慶應義塾大学, 経済学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RITU VIJ 慶應義塾大学, 経済学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 民主的ガバナンス / 社会政策 / 釜ケ崎 / 市民 / 国家 |
Research Abstract |
工業化された先進民主主義国において進行しつつある社会政策の変化について、最近の主要な議論には、(1)ポスト・ナショナルな市民の出現、(2)市場および消費に基礎を置いた政治共同体、(3)市民社会の復活と民主的ガバナンスの新形態、の3つがある。 これらの議論は国家の力の退場という点に特徴がある。これに対して、釜ヶ崎その他寄場の市民に対するグローバリゼーションのインパクトに関する本研究では、政策変化を実行する国家の努力は、国家の退場ではなく、むしろ国家の力を再確認させる役割を果たしている、と指摘する。 確かに、地域が進めてきた努力は過去10年間で増大しているといえるが、努力の主要部分は、高齢化や弱者・貧困層の救済、医療補助の欠如などの諸問題を解決するために地方自治体や国家の政策がターゲットになっている。言い換えれば、現代日本における社会・政治変化を理解するうえで、国家は中心的な存在であり続けているということである。 しかし、財政支出の増大に見られる国家レベルの政策とは異なり、寄場に特異な問題の対処という点では、国家のイニシャティヴはほとんど見られない。この点は、経済的なネオ・リベラリズムへの転換を強調する最近の議論を支持するものとなっている。 ネオ・リベラリズムと国家の力の再確認、日本のケースに見られるこの両者の結合こそ、政策形成と理論構築の両面で当該研究の分野に新たな視点を提供するものである。
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Research Products
(3 results)