2005 Fiscal Year Annual Research Report
可換代数と凸解析の計算技法に基づく信号処理アルゴリズムの開発とその応用
Project/Area Number |
04F04037
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 功 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SLAVAKIS Konstantinos 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 適応射影劣勾配法 / 非拡大写像の不動点集合上 / アレイアンテナ / 適応ビーム形成問題 |
Research Abstract |
本研究の成果は以下の3部(方法の提案・数学的解析・応用)にまとめられる。 第1部では「ある種の非拡大写像の不動点集合上で定義された凸関数列の漸近的最小化問題」(問題P)を考えている。この問題は複数の凸制約条件が課された適応信号処理問題に豊富な応用を持っている。まず、適応射影劣勾配法[Yamada and Ogura,2004]の自然な一般化を提案し、このアルゴリズムによって問題Pの解に強収束する点列が生成できることを明らかにする。次に、NLMS法、射影NLMS法、アフィン射影法、適応並列射影劣勾配法など既存の方法を含む広範なアルゴリズム群が提案アルゴリズムによって統一的に議論できることを示している。更に、ステレオ音響エコー消去問題に応用し本アルゴリズムによってもたらされる優れた効果を確認している。 第2部では第1部で提案した方法に関する数学的な解析を与えている。まず、「複数の凸制約条件を同時に満足するベクトルの集合」が「ヒルベルト空間に定義されたある種の非拡大写像の不動点集合」となっていることに注目し、「(非拡大写像の不動点集合上の)適応射影劣勾配法の収束定理」の厳密な証明を与えている。この結果は、適応射影劣勾配法が多様な凸制約条件に柔軟に対応できることを数学的に保証しているばかりでなく、(多様な制約条件を考慮することが必要な)多くの適応信号処理問題(「ステレオ音響エコー消去問題」や「アレイアンテナの適応ロバストビーム形成問題」など)を統一的に解決するための基礎を与えている。 第3部ではアレイアンテナのスティアリングベクトルの推定誤差にロバストなビーム形成を適応的に実現する問題(ロバスト適応ビーム形成問題)の新手法を提案している。まず、『アレイアンテナのロバスト適応ビーム形成問題』の理想的な解が満たす条件を整理し、瞬間情報に独立な複数の条件をある種の非拡大写像の不動点集合として表現している。次に瞬間情報に依存する条件を非負値凸関数列に組み込み、これを上記の不動点集合上で漸近的に最小化する方針を示している。更に、『非拡大写像の不動点集合上の適応射影劣勾配法』を適用することにより、この方針を実現するアルゴリズムを導いている。最後に数値例により、従来の代表的な『ロバスト適応ビーム形成法』に比べて遥かにロバストで高速な収束特性が提案法によって実現されることを確認している。
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Research Products
(3 results)