2004 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンの新生代貝類動物群の変遷:熱帯西太平洋の多様性の起源の解明に向けて
Project/Area Number |
04F04069
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Host Researcher |
加瀬 友喜 国立科学博物館, 地学研究部, 室長
|
Foreign Research Fellow |
アギラー ヨランダ・マーク 国立科学博物館, 地学研究部, 外国人特別研究員
|
Keywords | フィリピン / 軟体動物 / 新生代 / 古生物地理 / 種多様性 / 分類 / 熱帯西太平洋 / 古生物学 |
Research Abstract |
熱帯西太平洋の海洋生物の種多様性の起源を古生物学的な観点から解明するため、フィリピン産の新生代貝類の分類学的、年代学的研究を進めた。同国の新生代貝類の研究は周辺諸国(日本、台湾やインドネシアなど)に比べ極めて遅れており、同国の新生代貝類相の全容を明らかにするにはかなりの年月が必要である。そのため、この研究では漸新世以降の貝化石を多産する代表的な地域を選定し、試料の収集とその分類学的研究を進め、以下のような成果を得た。(1)同国には漸新世の貝化石は知られていなかったが、セブ島南部のカラガッサン層から、種数は少ないが、同時代の貝類群集を確認した。(2)ルソン島バギオ地域のミラドール石灰岩は更新世と考えられていたが、同石灰岩下部から前〜中期中新世と特徴づける巻貝のVicaryaを伴う貝化石群を発見した。この発見は、同地域の地質構造発達史研究の重要な新知見である。(3)ルソン島南部のバタンガス地域のマプロ石灰岩直下の泥質砂岩から100種を超える上部浅海帯の貝類群集を見いだし、ナンノ化石の検討から、その時代は中新世後期であることを明らかにした。(4)ルソン島ブラカン地域のかつて中新世後期と言われたタルタロ層の詳細な地質調査と化石試料収集を行い、潮間帯から上部浅海帯の200種を超える貝類を確認した。同層の時代はナンノ化石の解析から鮮新世中期であることが明らかとなった。(5)ルソン島ラウニオン地域のカタギンティガン層とミンダナオ島ダバオ地域の鮮新世後期〜更新世前期の貝類群を検討し、殆どの種が現世種であることを明らかにした。これらの研究の結果、(1)フィリピン群島の新生代貝類は、鮮新世中期から後期にかけて絶滅事変があったこと、また(2)中新世後期〜鮮新世中期のフィリピンとインドネシアの貝類動物群の組成がかなり異なり、2つの地域が異なる生物地理区にあったこと、が予察された。
|