2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04F04105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 豊信 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 建強 東京大学, 大学院・工学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 熱プラズマ溶射 / 熱プラズマ気相合成 / 熱遮蔽コーティング / イットリア安定化ジルコニア(YSZ) / エッチング / 準安定正方晶(t')YSZ / ナノインデンテーション / 輻射加熱低減 |
Research Abstract |
ハイブリッドプラズマトーチ2基装備したプラズマ堆積装置を用い、原料粉末の溶融/蒸発過程制御によって、溶射・PVDプロセスに特徴的な微細組織を複合化したイットリア安定化ジルコニア(YSZ)皮膜作製を行った。特に、熱プラズマ気相合成では空隙を効果的に含むポーラスナノ組織から、水冷式基板ホルダ利用による基板温度制御によって基板直上に超速凝縮を実現し、後述の特異な井桁構造を有する緻密ナノ組織のYSZ皮膜高速堆積に成功した。また通常、走査型電子顕微鏡(SEM)では明確に確認困難なYSZ結晶粒界に対し有効なエッチング技術を見いだし、簡便な組織観察を可能とした。その結果、溶射皮膜形成要素である各凝固スプラット中の結晶粒径が基板近傍から皮膜表面にかけてサブミクロンから数ミクロンサイズへと拡大することが判明し、熱遮蔽被膜作製時の基板への抜熱過程の変化及びその微細組織形成過程への影響が確認された。更に、水冷却基板上への熱プラズマ気相合成試料に対し本エッチング手法を行った結果、被膜断面全面に数10〜100ナノサイズの井桁構造を有する準安定正方晶(t'相)を確認した。一般に単結晶ジルコニアの急冷過程に於いて観察されるt'相の特長を反映する様に、熱プラズマ気相合成により作製される組織も他の手法により作製される皮膜に比べ非常に大きい数〜数10ミクロンサイズの結晶粒より構成されることが判明した。一方、t'相を含むYSZ皮膜の特性を赤外線反射計測及びナノインデンテーションにより評価した結果、波長1〜10ミクロンの赤外光に対してt'相を含む皮膜では15%強の反射率が得られ、大気圧プラズマ溶射皮膜(〜5%)、電子ビーム蒸着膜(10%前後)と比較して、高温環境下利用に際しより効果的に輻射加熱を低減しうる組織であることが判明した。またナノインデンテーションにより硬度30GPa、換算ヤング率250GPaが確認され、電子ビーム蒸着膜と比して各々2倍以上の強度を有することが判明した。これらは、低熱伝導度を可能とするポーラス組織と輻射加熱を低減しうる特異井桁組織を熱プラズマ気相合成により複合化することにより、各々の特長を重畳した新規遮熱コーティング実現を期待させる重要な成果であるといえる。
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Research Products
(1 results)