2004 Fiscal Year Annual Research Report
抗腫瘍性抗生物質アポトリジンの合成及び化学生物学的研究
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04F04115
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Research Institution | Keio University |
Host Researcher |
戸嶋 一敦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授
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Foreign Research Fellow |
RAHIM Mohammad A. 慶應義塾大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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Keywords | アポトリジン / 抗生物質 / 全合成 / アポトーシス / 癌 / アルドール反応 |
Research Abstract |
アポトリジン(1)は、新規マクロリド抗生物質であり、アデノウイルス癌遺伝子形質転換細胞に対して、特異的にアポトーシスを誘導する新物質である。さらに、米国国立ガン研究所(NCI)によるスクリーニングの結果、1は、37000種の抗生物質の中で、上位0.1%に入る癌細胞に対する特異性を持っていることが報告された。また、その構造的特徴として、ジエン、トリエン構造を含む20員環マクロラクトン部分、6員環ヘミアセタール構造を含む側鎖部分、および3つの糖が配糖化された複雑な高次構造を有している。本研究では、この複雑かつ顕著な生理活性を有するアポトリジン(1)の化学生物学的研究を視野に入れた、独自の新しい経路による全合成研究を行った。まず、逆合成解析により、アポトリジン(1)を、糖部分と非糖部分とに分割し、非糖部分はC1-C11位に相当するビニルスズ2と、C12-C28に相当するヨウ化ビニル3とに分けて合成した後,Stilleカップリング反応および山口法によりマクロラクトン化して合成することとした。尚、ビニルスズ2は、これまでの研究において、その効果的な合成法が確立されている。そこで、本年度においては、ヨウ化ビニル3の合成を目的とした。その結果、L-酒石酸ジメチルより11行程でC17-C22位に相当するエチルケトン4を、また、D-リンゴ酸より11行程でC23-C28位に相当するアルデヒド5をそれぞれ効果的に合成した。次に、これら両者を、スズ触媒を用いたアルドール反応により連結し、高収率かつ高立体選択的に望む不斉を有するアルドール成績体を得た。続いて、6員環アセタール構造を構築させた後、アリルトリブチルスズ試剤を用いたアリルスタナンカップリング反応、ヒドロジルコネーション反応などを経て順次炭素鎖を伸長していくことにより、1のC17-C28位に相当する重要な鍵合成中間体の効果的な合成に成功した。
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Research Products
(1 results)