2005 Fiscal Year Annual Research Report
抗腫瘍性抗生物質アポトリジンの合成及び化学生物学的研究
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04F04115
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Research Institution | Keio University |
Host Researcher |
戸嶋 一敦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授
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Foreign Research Fellow |
MOHAMMAD A.Rahim 慶應義塾大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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Keywords | アポトリジン / 抗生物質 / 全合成 / アポトーシス / 癌 / 保護基 / ベンジル基 / 光脱保護 |
Research Abstract |
アポトリジン(1)は、新規20員環マクロリド抗生物質であり、アデノウイルス癌遺伝子形質転換細胞に対してのみ特異的にアポトーシスを誘導する新物質である。さらに、米国国立ガン研究所(NCI)によるスクリーニングの結果において、1は、37000の抗生物質の中で、上位0.1%に入る癌細胞に対する特異性を持っていることが報告されている。また、構造的特徴としては、ジエン、トリエン構造を含む20員環マクロラクトン部分、6員環ヘミアセタール構造を含む側鎖部分、および3つの糖が配糖化された複雑な高次構造を有している。本年度の研究において、この複雑かつ有用なアポトリジン(1)の独自の新しい経路による全合成を検討した。その結果、アポトリジンのC17-C28に相当する鍵合成中間体の合成研究において、有機合成化学で広く用いられている保護基であるベンジル基の新たな脱保護法を見出した。ベンジル基は、通常、水素添加により脱保護されることが知られている。しかし、本研究において、ベンジル基が、アセトニトリル中、2,3-dichloro-5,6-dicyano-p-benzoquinone (DDQ)の存在下、365nmの光を照射することで、速やかに脱保護され、対応するアルコールを高収率で与えることを見出した。さらに、本脱保護法において、上記の3つの要素、アセトニトリル、DDQおよび光照射が必要不可欠な要素であることが確認された。また、p-メトキシベンジル基も同様に、脱保護されることを見出すと同時に、ベンジル基とp-メトキシベンジル基の両方を有する基質において、DDQのみでは、p-メトキシベンジル基が選択的に脱保護され、光を照射すると、両方の保護基が脱保護される基質選択的な脱保護法を開発した。本脱保護法は、アポトリジンの合成研究のみならず、多くの合成研究に広く用いられることが期待される新手法である。
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Research Products
(1 results)