2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04F04168
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉村 恵 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RASHID Md Harunor 九州大学, 大学院・医学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | 先制鎮痛 / モルヒネ / 慢性疼痛 / 痛覚抑制系 / モノアミン系 / in vivoパッチクランプ記録 / EPSC / 痛み応答 |
Research Abstract |
あらかじめ十分に鎮痛を行い手術を行った時には、術後の痛みが軽減されることが知られているが、そのメカニズムは明らかではない。そこで、末梢神経損傷モデルマウスを用い、あらかじめモルヒネを投与する事によって鎮痛を行ったものと、対照群から脊髄スライス標本を作製し、パッチクランプ法によって脊髄後角細胞のシナプス応答の比較検討を行った。また、免疫組織学的手法を用いて解析した。次いで、シナプス応答に対するモルヒネの抑制作用を先制鎮痛モデルマウスと先制鎮痛を行わなかった対照群で比較検討した。坐骨神経損傷モデルマウスを作製し、von Frey hair testによって明らかに痛覚過敏の状態にあったマウスを用いて以下の実験を行った。 (1)神経損傷によって、本来ならばIII層以下の深層に終末している触覚などを伝えるAβ線維が軸索発芽を起こし、痛みの伝達に密接に関わる膠様質にシナプス伝達を起こしていることを明らかにした。このAβ知覚線維の軸索発芽は、神経を障害する前にあらかじめ抗BDNF抗体を投与しておくと阻止されることを見いだした。また、行動薬理学的にも痛覚過敏が抗BDNF抗体によって抑制された。ついで、モルヒネ先制投与を行った後に坐骨神経を障害したものと対照マウスからスライス標本を作製し、同様にAβ線維の軸索発芽が惹起されるか否かを検討した。その結果、対照マウスと比較してAβ線維の軸索発芽が有意に抑制された。また、行動薬理学的にも痛覚過敏の程度が弱まっていた。 (2)先制鎮痛をおこなったマウスから得られたスライスでは後根刺激によって誘起されたEPSCに対するモルヒネの作用が強くみられる傾向があった。 以上の結果から、あらかじめ痛みをのぞいた状態で手術をすることは、術後にみられる疼痛を抑制するためには有効な方法であると考えられた。
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Research Products
(10 results)