2004 Fiscal Year Annual Research Report
集光性色素アンテナタンパクLHCII複合体の構造と機能
Project/Area Number |
04F04178
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Research Institution | Okayama University |
Host Researcher |
沈 建仁 岡山大学, 自然科学研究科, 教授
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Foreign Research Fellow |
LENG Jing 岡山大学, 自然科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 光合成 / 光化学系II / 結晶化 / 膜タンパク質 / タンパク質複合体 / 結晶構造解析 / 放射光 / X線 |
Research Abstract |
集光性アンテナタンパク質(LHCII)は光化学系II複合体(PSII)の外側に結合し、太陽光エネルギーを吸収してPSII反応中心に伝達する役割を持っている。本研究の本来の目的はLCHIIの構造をX線結晶構造解析法により解明し、LHCIIによる光エネルギーの吸収とPSII反応中心への伝達の機構を分子レベルで解明することである。しかし、ホウレン草由来LHCIIの結晶構造が2004年にLiuらによって報告され(Liu et al.Nature,2004,428,287-292)、LHCIIによる光エネルギーの吸収機構が詳細に解明された。このため、LHCIIからPSIIへのエネルギー伝達機構の解明が大きな課題となるが、PSIIの結晶構造が充分高い分解能で解析されていないためLHCIIからPSIIへのエネルギー伝達機構の解明ができないのが現状である。そこで本研究では、PSIIの構造をより高分解能で解析するための結晶化条件の探索を行った。本年度では好熱性ラン色細菌Thermosynechococcus vulcanus由来PSIIにおける各種脂質の役割を調べた。すでにチラコイド膜に比べ、精製PSIIにおいてDGDG, MGDG, SQDGの相対含量は低下するが、PGの相対含量は著しく増加することが脂質の分析から分かったので、精製PSIIをリパーゼやホスホリパーゼ処理し、酸素発生活性への影響を調べた。その結果、リパーゼは酸素発生活性をわずか(10%程度)に低下させるが、ホスホリパーゼは活性を40%低下させることが分かった。リパーゼとホスホリパーゼ処理のいずれにおいてもPSIIのサブユニット組成は変化しなかったので、ホスホリパーゼ処理による酸素発生活性の低下はPSIIに結合しているリン脂質が分解されたためと考えられる。これらの結果からPSIIの構造と活性維持にリン脂質が重要な役割を持っていることが示され、良質なPSIIの結晶作製にリン脂質の添加が有効かもしれないことが示唆された。今後はPSII電子伝達反応におけるリン脂質の機能部位を各種活性測定法により特定する予定である。
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