2004 Fiscal Year Annual Research Report
メダカの脳における性差発現の分子メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
04F04180
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
長濱 嘉孝 基礎生物学研究所, 生殖生物学研究部門, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHAUBE Radha 基礎生物学研究所, 生殖生物学研究部門, 外国人特別研究員
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Keywords | 性的可塑性 / メダカ / 脳 / 生殖腺 / 性行動 / アンドロゲン / エストロゲン / 性分化 |
Research Abstract |
脊椎動物では、性分化は先ず生殖腺で始まり、さらに卵巣や精巣で作られる性ホルモンが脳を含む個体の性分化を制御すると考えられている。しかし、脳の性分化、或いは成体の脳で保持されていると考えられる性的可塑性の分子メカニズムに関しての研究は進んでいない。そこで本研究では、脊椎動物のなかでも性的可塑性がもっとも強く保持されている魚類、特にメダカを用いて脳の性分化と性的可塑性について解析する。 初年度は、成体(成熟魚)に保持されている脳と性行動の性的可塑性について検討した。メダカの雌雄成熟魚をエストラジオール-17β(E2)、メチルテストステロン(MT)、11-ケトテストステロン(11-KT)、17α,20β-ジヒドロキ-4プレグネ-3-オン(DHP)を含む飼育水で14日間飼育し、その間における(0、2、4、6、8、10、12、14日後)雌雄魚の性行動を観察した。その結果、E2処理により、雄魚の性行動が雌の行動に転換した。逆に、MTと11-KTの処理では雌魚の性行動が雄の行動に転換した。両者における効果は11-KTの方が数倍強かった。また、DHPにも雄の性行動を雌に転換する作用が認められたが、その効果はE2に比して10倍低かった。これらの結果から、メダカの成熟魚においては性行動の性的可塑性が強く維持されており、その可塑性は性ホルモン処理により発現させうることが明らかになった。今後、この成体で保持されている性行動の性的可塑性の分子メカニズムを明らかにするために、上記性行動の転換を制御する脳/神経系について解析する計画である。 さらに、脳の性分化メカニズムを解析するために遺伝的全雌、全雄群のメダカ(孵化2日前、孵化日、更に孵化後7日迄毎日)からRNAを抽出するとともに、脳、生殖腺を固定した。今後、これらの試料を用いてメダカの脳の性分化に関わる遺伝子群を単離し、それらの発現を解析する計画である。
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