2005 Fiscal Year Annual Research Report
一分子生理学の立ち上げ:一個の分子機械の機能と構造変化の直接観察
Project/Area Number |
04F04188
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Research Institution | Waseda University |
Host Researcher |
木下 一彦 早稲田大学, 理工学術院, 教授
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Foreign Research Fellow |
PATRA Digambara 早稲田大学, 理工学術院, 外国人特別研究員
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Keywords | F_1-ATPase / ATP合成 / 磁気ピンセット / 磁気ビーズ / トルク |
Research Abstract |
ATP駆動の回転分子モーターであるF1-ATPase(以下F1)は、外力により逆回転させることによりATPを合成するが、この力学-化学エネルギー変換の仕組みの解明を目指して努力を続けている。一回転あたり何個のATPが合成されるのかを種々な条件下で定量するのが目標だが、定性的証明だけに7年を要した困難なテーマであり、やっと見通しが立ちつつある段階である。 逆回転させるには、F1の回転子であるγサブユニットに磁気ビーズを結合させ、これを磁気ピンセット(電磁石)で回転させる。これまで、磁気ビーズの不均一性が大きな問題であった。市販・自作を含めて多種のビーズを試した結果、Seradyn社のビーズを軽く遠心して使うのがよいことが分かった。多くのビーズを、毎秒10回転で回転させられる。 観察用チェンバーは、背景光(下記)を減らすためできるだけ薄く、またF1が床面側だけに結合して天井面につかないことが必要である。チェンバーの厚みの制御には大きめのビーズを用い、天井への非特異吸着を防ぐにはあらかじめガラス面をシラン化しておくのがよいことが分かった。 ATP合成はルシフェラーゼの発光を利用して検出するが、合成に必要なADPの中にATPが混入して背景光を生じるのが最大の問題である。精製法を工夫し、検出不可能(7桁以上)な所まで混入量を減らすことに成功した。 以上のような努力により、磁石による強制逆回転のとき正回転に比べてルシフェラーゼの発光量が大きいという期待通りの結果が出つつあるが、今のところまだ再現性がよいとはいえず定性的な結果にとどまっている。 なお、磁力を弱くするとF1の出すトルクを見積もれるが、燐酸はトルクに影響を与えない、などの予備的結果が得られている。
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