2006 Fiscal Year Annual Research Report
一分子生理学の立ち上げ:一個の分子機械の機能と構造変化の直接観察
Project/Area Number |
04F04188
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Research Institution | Waseda University |
Host Researcher |
木下 一彦 早稲田大学, 理工学術院, 教授
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Foreign Research Fellow |
PATRA Digambara 早稲田大学, 理工学術院, 外国人特別研究員
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Keywords | F1-ATPase / 磁気ビーズ / エネルギー変換 / ATP合成 / 変換効率 |
Research Abstract |
ATP駆動の回転分子モーターであるF1-ATPase(以下F1)は、回転子であるγサブユニットを外力により逆回転させると、ADPと燐酸からATPを合成する。すなわち、化学エネルギー(ATP加水分解により得られる自由エネルギー)と力学エネルギー(回転に伴う力学的仕事)をどちら方向にも変換できる、可逆なエネルギー変換分子機械である。ATP分解のほうがどのように回転を生み出すかにかんしては、かなり分かってきたが、合成のほうはまだ基礎データもほとんどない。 我々は、合成機構に迫るため、γサブユニットに1μm程度の磁気ビーズを結合させ、電磁石によりビーズを自在に回転させる系を開発した。磁力が強いときは、正逆どちらの方向にもビーズ(従ってγ)を何回転でも回転させることができ、この操作でF1は壊れない。ところが磁力を弱めていくと、溶液条件により回転させられる場合とできない場合があることを発見した。逆回転(ATP合成方向)の場合、溶液中にADPと燐酸が両方存在するとき、弱い力でも回転させられる。正方向の場合は、ATPの存在が回転を容易にする。当たり前のようであるが、これらの結果は、F1の中にスイッチが内蔵されていて、必要な基質を溶液中から結合できたときに始めてスイッチがオンになって先に進める(回転を続けられる)仕掛けになっていることを意味する。効率よいエネルギー変換のためには(空回りを防ぐには)スイッチが必要なことは予想されていたが、実験的証明は初めてと思われる。F1の構造から、各スイッチ(基質ごとに異なると予想)は120度おきに3個あると考えられるが、実際にそれを示唆するデータが得られた。
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Research Products
(3 results)