2005 Fiscal Year Annual Research Report
血糖値に応答してインスリン遺伝子の転写を行う膵島β細胞特異的転写因子MafAの生化学的機構の解明
Project/Area Number |
04F04189
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
片岡 浩介 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HAN Song-iee 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 転写制御因子 / インスリン / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
インスリンは血糖値を保つために必要不可欠なペプチドホルモンであり、その制御システムの破綻は糖尿病を引き起こす。インスリン遺伝子の発現は膵臓ランゲルハンス島のβ細胞に特異的で、かつグルコース濃度依存的であり、bZip型転写因子MafAがこれを担う重要な因子である。本研究は、MafAの活性の制御機構を分子生物学的・生化学的手法を用いて解析することにより、これまで未解決であったインスリン遺伝子のグルコースによる発現調節を解明することを目的とする。 前年度までに、膵島β細胞由来細胞株におけるMafAタンパク質の翻訳後修飾とその意義を解析した。本年度はさらに詳細な解析を継続して行い、膵島β細胞でのインスリン遺伝子発現のグルコース応答におけるMafAの役割を分子レベルであきらかにすることができた(投稿準備中)。 また、その研究の途上で、MafAタンパク質が機能を発揮するために必要なコファクターの存在を発見し、同定することに成功した。すなわち、MafAタンパク質はホモ2量体としてDNAに結合して遺伝子発現の制御を行っていると考えられてきたが、β細胞内では別の転写制御因子とヘテロ2量体を形成していることを発見した。さらにこの因子の実体を、候補と考えられる転写因子に対する特異抗体を各種用いて検討することにより同定した。この因子のcDNAを入手し、そのDominant Negative型変異体を作製して膵島β細胞株に導入したり、その発現をsiRNA法により抑制したりすることによる機能阻害実験を行ったところ、この因子がインスリン遺伝子プロモーターの活性制御において重要な役割を担っていることをあきらかにすることができた(投稿準備中)。以上の結果は、インスリン遺伝子発現制御や膵島β細胞の発生・分化における未知の制御機構が存在することを明確に示すものであり、今後、MafAおよびこの因子が、血糖値の維持や糖尿病の発症にどのように関わっているのかをより詳細に追究する必要がある。
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