Research Abstract |
森林における水・エネルギー・CO2交換に対する都市化の影響を明らかにするために,名古屋市内(名大サイト)及び近郊(瀬戸サイト,豊田サイト)に位置する常緑・落葉広葉樹混交林におけるこれらのフラックス及び気象状態量の観測結果の解析を継続した.大気中CO2濃度および気温の日内変動特性より,名大サイトが最も都市化の影響を受けているサイトであり,以下順に瀬戸サイト,豊田サイトで都市化の影響を受けていると判断された. その結果,気候条件がほとんど変わらない地域における同タイプの森林においても年間炭素固定量に大きな変動のあることが示された.すなわち,名大サイトでは4.1tCm-2year-1,瀬戸サイトでは2.3tCm-2year-1,豊田サイトでは5.3tCm-2year-1の炭素固定が推定された.サイトごとの総光合成量の大小関係は,夏期(6-8月)と他の季節では異なった.夏期には名大サイトが最も大きい総光合成量を示し,他の2サイトの光合成量には大きな相違が認められなかった.一方,春,秋,冬期には瀬戸サイトでの総光合成量が最も大きくなり,名大サイト,豊田サイトでは大きな相違が認められなかった.この原因は以下のように考えられた.夏期には常緑樹,落葉樹とも葉は全て成熟状態にあり,林分としての光合成能力に大きな差はないと考えられる.そして,名大サイトでは年平均大気中CO2濃度が約400ppmと瀬戸サイトと比較して約15%高く,高CO2濃度にさらされる影響が夏期に顕在化したことが示唆される.一方,落葉樹の葉は春季には未成熟,秋季には老齢化,冬期には存在しないため,常緑樹・落葉樹の構成比により季節による森林の光合成能力が変化すると考えられる.そして,本研究で対象とした3サイト中瀬戸サイトの常緑樹林の占める割合は,他の2サイトと比較して非常に高い.この森林の樹種構成の影響が,春・秋・冬期には顕在化したと考えられた.
|