Research Abstract |
日本や韓国で採取されるマツタケはアカマツ(Pinus densiflora)の根に菌根をつくる.しかし,これらの地域以外で採取される"マツタケ"はアカマツと異なる針葉樹を宿主としている.また,最近,中国西部の四川省,雲南省の常緑かし類を主体とする広葉樹林でもマツタケが発生することが報告されている.したがって,これらのマツタケと総称されるきのこには,宿主特異性からみると,少なくとも生態型の異なるものを含むと考えられる.しかし,マツタケの宿主特異性についての生態学的解明は未だ不十分で,また,マツタケと総称されるきのこの遺伝学的解明も皆無であり,これらのマツタケがすべて同一の生物種であるかどうかは全く報告がない.そこで,本研究では,異なる生態型を示す"マツタケ"と総称されるきのこについて,主にアジアで採取した菌株を用いて分子系統学的解析を行った. 本研究には,(財)発酵研究所保有のマツタケ(Tricholoma matsutake)IFO30605株,および中国四川省で採取した,かし林を宿主とするマツタケX-1,X-3株,中国雲南省で採取した,同じく,かし林を宿主とするマツタケN-1,N-2,N-3,N-4株を用いた.これらの菌糸体および子実体は凍結乾燥した後,DNA抽出,PCR増幅およびシークエンス反応を行い,mtSSU rDNA V4領域の塩基配列を比較した. 日本産IFO 30605株と中国産X-1,X-3,N-1,N-2,N-3,N-4株のmtSSU rDNA V4領域の塩基配列を比較したところ数塩基の違いがみられた.しかし,中国産の菌株はすべて同じ塩基配列であった.また,V4領域に関する限り,韓国のマツタケ菌株と中国のマツタケ菌株は同一の塩基配列を示した.現在,mtSSU rDNA V6,V9領域の塩基配列の比較実験を進めている.
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