2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04F04240
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Research Institution | Shinshu University |
Host Researcher |
久保 惠嗣 信州大学, 医学部, 教授
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Foreign Research Fellow |
YUNDEN Droma 信州大学, 医学部, 外国人特別研究員
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Keywords | シェルパ族 / 高地適応 / 遺伝 / エヴェレスト / アンジオテンシン変換酵素(ACE) / ACE遺伝子の挿入・欠失多型(ACE-I / D多型) |
Research Abstract |
研究実績の概要 研究分担者らは平成16年9月〜10月、ネパールに赴き検体収集を行った。飛行機でエヴェレスト街道の起点ルクラに入り、2日間かけてシェルパ族最大の村であるナムチェ(海抜3,400m)に到達した。シェルパ族の協力者を募り、質問票を用いた問診、身体診察、動脈血酸素飽和度(SpO_2)測定および血液採取を行った。最終的に105検体を集めた。得られた血液は、血清保存用と遺伝子解析用に分け、血清は日本から持ち込んだ遠心分離機で分離し、直ちに凍結した。 一方、カトマンズ市内およびその近郊において、対照用の検体収集を施行した。ネパール人107名に対し、シェルパ族と同様のプロセスで行った。最後にすべての検体を保冷剤とともに厳重に梱包し、日本まで大切に搬送した。 疫学調査の結果は、シェルパ族の平均年齢31.1±7.7歳に対し、ネパール人は29.9±8.3歳であった。107名中106名(99.1%)のシェルパ族に登山経験があり、年間3.5±2.9回、海抜5,707±1,204mの高地へ赴いていた。一方、112名のネパール人のうち登山経験者は69名(61.9%)のみで、年間1.4±1.5回、海抜2,679±1,234mであった(p<0.0001)。シェルパ族は海抜5,519±1,159m以上の高地で高山病症状が出現するのに対し、ネパール人は海抜2,750±289mで出現した(p<0.0001)。今回調査したシェルパ族にリエントリー高山病と慢性高山病の症状・所見は認めなかった。しかし、心拍数、体血圧およびSpO_2は両群間で有意差を認めた。 血清アンジオテンシン変換酵素(ACE)活性は両群間で有意差を認めなかったものの、ACE遺伝子の挿入・欠失多型(ACE-I/D多型)を調べたところ、DD型がネパール人に有意に高頻度であった。すなわち、高地順応不全にACE-I/D多型が関与する可能性が示唆された。
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