2005 Fiscal Year Annual Research Report
神経難病ポリグルタミン病に対する凝集阻害ペプチドQBP1を用いた分子治療法の確立
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04F04242
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Research Institution | Osaka University |
Host Researcher |
戸田 達史 大阪大学, 医学系研究科, 教授
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Foreign Research Fellow |
ポピエル ヘレナ明子 大阪大学, 医学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ポリグルタミン病 / 神経変性疾患 / 分子治療 / 遺伝子治療 / 細胞膜透過性ペプチド / ウイルスベクター / モデルマウス |
Research Abstract |
ポリグルタミン(polyQ)病は、原因遺伝子内のグルタミンをコードするCAG反復配列が異常伸長することにより発症する遺伝性神経変性疾患の総称である。発症分子機構としては、異常伸長したpolyQ鎖が病的コンフォメーションを獲得することにより難溶性の凝集体を形成し、神経変性を引き起こすと考えられている。現在polyQ病には有効な治療法は確立されていない。我々はこれまでに異常伸長polyQ鎖に特異的に結合し、凝集を阻害するペプチドQBP1を同定している。そしてQBP1を発現するトランスジェニックショウジョウバエとpolyQ病モデルショウジョウバエとの遺伝学的交配により、QBP1の発現による神経変性の抑制を示している。本研究では、QBP1を用いたpolyQ病の治療法確立を目指して、以下の研究を行った。 (1)QBP1に細胞膜透過性ペプチド(PTD)を付加したPTD-QBP1投与によるpolyQ病モデル動物への分子治療を試みた。PTD-QBP1をpolyQ病モデルショウジョウバエのエサに混ぜて投与することにより、封入体形成、及び寿命短縮が改善されることを明らかにした。 (2)PTD-QBP1を発現するウイルスベクターによる遺伝子治療を試みた。PTD-QBP1、さらにPTD-QBP1をより広範囲に広めるために分泌シグナルIg κを付加したIg κ-PTD-QBP1を発現するアデノ随伴ウイルスベクター5型(AAV5)をハンチントン病モデルマウスR6/2の脳に注射したところ、コントロールのGFP発現ウイルスベクターと比べ発現が弱く、治療効果は認められなかった。そこでQBP1-GFPを発現するAAV5を作製し、マウスの脳に注射したところ、注射側線条体広範囲で長期間にわたる高レベルのQBP1の発現を認めた。4週齢のハンチントン病モデルマウスの線条体へAAV5-QBP1-GFPの注射を行ったが、4週齢マウスでは既に異常伸長polyQタンパク質の封入体形成が始まっており、十分な治療効果が得られなかった。これらの結果から、封入体形成が始まる前(生後1-2週齢)からのAAV5-QBP1-GFPの注射が必要であることが示唆された。
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Research Products
(1 results)