2005 Fiscal Year Annual Research Report
脱儒から脱亞へ--日本近世・近代の思想変化と東アジア思想構図の再構成--
Project/Area Number |
04F04252
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒住 真 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
韓 東育 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 三教合流 / 本体の解体と再建 / 山鹿素行 / 実用主義 / 民族主義 / 京学派 / 明治維新 / 福沢諭吉 |
Research Abstract |
十七年度研究の目的の一つは、従来の正統儒教を主軸とする接近を反省し、他の諸思想に目配りし、その構図自身を書き換えることを目指すので、「『三教合流』と儒教における主旨の形骸化について」という論文を書いたわけである。それは、「原始儒学の主旨」、「儒学の経典構造の変貌」、「受身的な挑戦を受けること」など「三教(儒・道・釈)合流」のプロセスを通じて、儒教が如何に空論の泥沼に陥ったかということを徹底的に洗おうとしたことである。また、それを通じて、なぜ近世ないし近代に入ってから、日本の学者たちは理学の批判をせざるを得ないかということもわかるようになった。そこで、従来の近代に向けての日本の思想変化についての単純な「儒教近代化論」の神話を打破し、中国近代化における「孔教復興運動」がもたらした消極的な影響をも徹底的に反省しようとした。その上で、正統的儒教以外の東アジア諸思想をも複合的に含み入れた日本思想史を再構成し、近代に向けての思想変容を積極的に再把握しようとした。その成果として、『本体の解体と再建-日本思想史についての再解釈-』という本が出版された。一方、「明治期」に入ってから顕在化された日本ナショナリズムについてである。「江戸期」の遠因を考察しようとするため、「山鹿素行の著書における実用主義と民族主義について」という論文を書いたわけである。「他者」である中国への批判をやり過ぎたことは、近代の帝国主義を引き起こした歴史的な誘因の一つではないかと認識しており、また、「日本『京学派』における朱子学利用の経緯について」という論文を通じて、ある程度、一つの延長線にある福沢諭吉・北一輝などある面の思想を客観的に批判を試みようとした。
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