2005 Fiscal Year Annual Research Report
ノモンハン事件前夜の日ソ関係とモンゴル-ノモンハン事件拡大の背景とモンゴル人粛清問題-
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04F04259
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
吉田 裕 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ARIUNSAIHAN MANDAH 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | モンゴル / 粛清 / ノモンハン事件 / 関東軍 / ソ連 / 満州事変 / 国境線 |
Research Abstract |
現在までのところ日本人関係者の回想記、外務省、陸海軍文書などを中心にモンゴル革命以降のモンゴル情勢についての日本人のとらえ方を実証的に検討してきた。 1921年以来、モンゴルはソ連との関係を強化してきた。この一方で、ソ連以外の国、とくに日本や中国に対して強い警戒心をもち、外国人のモンゴル訪問が厳しく制限された。この意味で、今年度、詳しく分析した盛島角房、児島岩太郎の記録などは、実際に現地で革命後のモンゴル社会を体験した日本人の記録として、満州事変前夜のモンゴルの政治情勢や、対日関係、ソ連の対モンゴル政策について日本人がどう見ていたのかを伝える重要なものである。両者の記録に共通する点は、一般のモンゴル人が、日本に親近感を持ち、むしろソ連の対モンゴル政策、社会主義化政策に対して不満を持っていると指摘している点である。実際、コミンテルンとソ連による急進的社会主義化政策は、モンゴルにおける階級対立を激化させ、1932年に勃発したラマ僧、牧畜民らによる武装蜂起の原因となっている。 1937年のモンゴルの大粛清後、モンゴルから多くの人々が満州国に亡命したが、彼らによって関東軍に、大粛清によりモンゴルの反ソ感情が高まり、モンゴル軍が動揺し弱体化しているという情報がもたらされた。第一線に立つ関東軍にとっては、「反ソ的日本のスパイ組織」の実際の有無にかかわらず、モンゴル国内に反ソ親日的な感情が、対ソ戦略上重要な意味をもちうるほどの広がりをもって存在している証拠と捉えられた可能性がある。今後、モンゴルからの亡命者が関東軍に提供した情報が、関東軍の対モンゴル作戦策定とノモンハン事件の拡大にどのような影響を与えたのかを具体的に検討してみたい。
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Research Products
(2 results)