2004 Fiscal Year Annual Research Report
中央アジアにおける遊牧諸民族の居住形態及びエコロジカルな移動居住の必要性に関する研究
Project/Area Number |
04F04279
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石山 修武 早稲田大学, 理工学術院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海 日汗 早稲田大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 内モンゴル / 生態移民 / 居住形態 / 遊牧民 / 遊牧生活様式 |
Research Abstract |
「生態移民」の定義:生態破壊による発生する移民のことである。内モンゴルにおいては、現在、深刻な環境問題である砂漠化が著しく進んでおり、遊牧生活が不可能となり、遊牧生活可住地、あるいは都市近郊への自発的移り住む「生態移民」と政府の計画及び移民プロジェクトによって発生する組織的な「生態移民」と二つの移民現象が見られる。 「生態移民」の居住形態の傾向:(1)「生態村」、「生態鎮」の建設:政府の移民プロジェクトによって、牧民が定住し、定住生活様式を営む。(2)定住放牧生活様式:定住式住居に住み、制限された範囲で、制限された家畜を放牧する。牧地が個人化されたため、牧民の生活は牧場経営を中心にした生活様式になる。(3)新式遊牧様式:ゲルに住み、ホトを中心に半径三〜五キロメートル範囲の営地をつくり、営地内で期間を決めて自由に放牧する。草が家畜に1/3〜1/2程度食べられたら、移動を始める。移動先で新しいホトを作り、同様にホトを中心に半径三〜五キロメートル範囲の営地を作り、営地内で放牧する。一年間はこのような過程の繰り返しである。この様式は草原の生態系を考え、草の状況で牧民の移動リズムを決めるといった、伝統遊牧文化を最大に生かした新式遊牧様式である。 「生態移民」の実態調査によると、八割の元牧民(若者の殆ど)が「生態村」、「生態鎮」での定住生活様式に賛成しているため、政府の生態移民プロジェクトの実行の可能性が大きくなっている。しかし、伝統遊牧生活様式を継続しながらも、内モンゴル地域の環境、草原生態系及び遊牧民の生活を最大限に維持したとされている新式遊牧様式の実行が難しいというのが現状である。
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