2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本における歴史的建造物保存修理事業の方法と展開、その国際関係に関する研究
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04F04280
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
稲葉 信子 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所, 国際文化財保存修復協力センター・企画情報室, 室長
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
UGO MIZUKO 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所, 国際文化財保存修復協力センター・企画情報室, 外国人特別研究員
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Keywords | 歴史的建造物 / 保存 / 修復 / 復原・復元 / 戦後 |
Research Abstract |
10月中旬より、歴史的建造物の保存修復に関するさまざまな催しに参加した。そこでは、文化財保護に関する日本の現況、日本以外の専門家にとって理解しがたい独特な概念がどのようなものなのかを理解し、研究対象を確認した。 日本における歴史的建造物保存修理事業の方法をみると、例えば、法隆寺などの修理現場で得られた知見がアカデミックな建築史学の展開に影響をもたらしたことは知られている。しかし、全体の流れをイタリアでの歴史的建造物の保存修復の発展と比較すると、ほぼ同じような段階を経てきたことが分かった。つまり、現場の観察や建物の実測が第一歩で、その後は文献に基づく「文献的研究」の本格的な調査が始まる。そして次の段階としては、法隆寺伝法堂の「復原的研究」で建造物と史料を合わせた本格的な保存修復が行われるようになる。イタリアでは、装飾を重視する「様式的修復restauro stilistico」から文献に基づく「歴史修復restauro storico」、戦後の修復理論の「批判的修復restauro critico」へと推移している。日本では歴史的建造物の保存修理方法がある程度仕上がると同時に1950年に法が整備される。しかし、戦後も修理方法に多少の変化があると思われる。今後は、具体的な事例を使って、建築史の観点ではなく修復史の観点から調査分析をさらに進める予定である。復原を批判し後世修理に歴史的価値を認める態度や、解体修理に反対する修理技術者がすでに明治時代からいることは多くの研究によって明らかになっているが、本研究ではそうした議論と現在の修理方法との関係を特に取り上げたい。 イタリア(ミラノ)でも調査を行い、戦後に行われた修復事業についての資料を収集した。
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Research Products
(1 results)