2004 Fiscal Year Annual Research Report
速度分解励起原子衝突イオン化電子分光法と走査プローブ顕微鏡による表面反応ダイナミクスの解明
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04F04384
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Research Institution | Tohoku University |
Host Researcher |
大野 公一 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授
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Foreign Research Fellow |
BORODIN Andriy 東北大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | Collisional Ionization / Electron Spectroscopy / Scanning Probe Microscope / Interaction Potential / Reaction Dynamics / Molecular Orbital |
Research Abstract |
衝突イオン化反応(ペニングイオン化)は表面最外層の電子軌道の広がりを敏感に探索できる手法のひとつであり、本研究では走査プローブ顕微鏡と組み合わせて、表面における化学現象の立体ダイナミクスの解明を目的としている。最近、金属表面での化学反応との関連で注目されている、有機化合物であるカルボン酸およびそのエステル(ギ酸、酢酸、ギ酸メチル)について、二次元ペニングイオン化電子分光(2D-PIES)を用いて分子軌道および相互作用の異方性に関する知見を得た。その結果、準安定励起ヘリウム原子(He^*(2^3S))との引力的相互作用領域は標的分子の酸素原子近傍に局在しており、さらにカルボニル酸素近傍での引力井戸の大きさがヒドロキシル酸素近傍でのそれよりも約二倍程度大きいことがモデル計算により示され、実験結果を良好に説明することができた。一方、斥力的相互作用領域はメチル基近傍およびπ電子領域に広がっていることが分かった。とくに、π軌道の広がる方向での斥力的相互作用に関してアミド化合物(HCONH_2やCH_3CONH_2)との類似性を見出した。さらに、ペニングイオン化電子スペクトルのバンド強度からは、イオン化状態の帰属についても議論することができた。 また、π共役系置換基を有する芳香族分子(フェニルアセチレン、ジフェニルアセチレン)の電子構造および励起ヘリウム原子との異方的相互作用に関しても2D-PIESによる研究を現在進行中である。置換基のπ電子は芳香環のπ軌道と強く相互作用し、電子構造が大きく変化することが知られている。そのような共役効果では芳香環と置換基との幾何的な配座が支配因子となることが期待される。
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