Research Abstract |
半導体デバイスの微細化に伴い,配線中に流れる電流密度は飛躍的に増大しており,エレクトロマイグレーション(EM)などに由来する断線不良が顕在化しつつある。このため,本研究では,Cu配線に異種金属を添加し,粒界やヘテロ界面に偏析もしくは合金化させることによりEM耐性を向上させ,信頼性を向上させること自指している。 昨年度までに,Cuへの添加元素としてAgを検討し,真空蒸着法によりAgを添加したCu合金薄膜を形成し,アニール処理などにより添加元素が粒界,表面,界面などに偏析するか,Cu中に固溶しているか,また,そのときに比抵抗などの物性値や結晶粒径などにどのような影響を与えるかを系統的に探索した。その結果,AgはCuに添加しても余剰なものは表面に偏析すること,また,過剰なAg添加はCuの結晶配向性や結晶粒成長などを阻害することが分かり,添加量を微量に制御することが重要であることがわかった。この結果を踏まえ,平成17年度はCu合金の作製手法として,近年急速に注目を集めている超臨界流体を利硝した薄膜形成(SCFD)を試みた。本手法は,超臨界二酸化炭素に有機金属錯体を溶解させ,水素などの還元剤を添加して,金属薄膜を析出させるものである。超臨界二酸化炭素の優れた溶媒能により,様々な有機金属錯体を利用することができ,合金系の探索に非常に適しているだけでなく,ULSI微細配線の内部にまで均一に薄膜を形成できる能力が期待できる。CuのSCFD合成はすでに報告例も多いので,AgのSCFD合成を主に検討した。その結果,Ag薄膜はH_2を還元剤として採用するプロセスでは連続膜を形成できないことが明らかになった。その代わり,H_2よりも安全なアセトンを用いるとAg薄膜の形成が可能であること,また,アセトン中の微量な水分が膜質を劣化させること,アセトン濃度には最適値があることなどを明らかにした。 来年度はこの知見をもとにCu-Ag合金のSCFD合成を検討する予定である。
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