2004 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解赤外分光法によるロドプシンの内部結合水の構造解析
Project/Area Number |
04F04452
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
神取 秀樹 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VICTOR A. Lorenz Fon 名古屋工業大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | プロトンポンプ / 内部結合水 / 時問分解赤外分光法 / スイッチ / バクテリオロドプシン / 伸縮振動 / レチナール / 光受容蛋白質 |
Research Abstract |
これまで研究代表者は低温赤外分光法を用いて、分子ポンプ蛋白質であるバクテリオロドプシンに結合した内部結合水の性質を明らかにしてきた。本研究では、これを蛋白質が実際に機能する室温でも起こるのかどうか明らかにするため、室温での時間分解赤外分光法による解析を行う。研究分担者が学振の外国人特別研究員として平成16年10月に研究グループに加わった時点から研究を開始し、本年度は時間分解赤外分光測定系の構築を行った。そして、十分な精度でレチナールや蛋白質骨格の信号を得る系を構築した。今後は、水分子の信号というチャレンジングな目標に向かって研究を遂行する。本年度はこのような研究の立ち上げの他に、分子ポンプに関する以下の研究成果を得ている。 1.バクテリオロドプシンのシッフ塩基領域に存在し、内部結合水と水素結合を形成すると考えられているArg82の伸縮振動を帰属することに成功した。その結果、光異性化により水分子を含む水素結合ネットワークに摂動が生じてArg82の水素結合変化が起こること、その摂動がL中間体で緩和する一方、Arg82が動くM中間体では振動数は同じであるものの双極子モーメントが変化することを偏光赤外分光により明らかにした。また共同研究として、異性化前後での水分子の基準振動解析を量子化学計算により行い、実験とのよい一致を示す結果を得た。 2.ハロロドプシンは、プロトンではなく塩素イオンを輸送する光駆動ポンプ蛋白質である。ハロロドプシンの内部結合水を低温赤外分光によって解析した結果、バクテリオロドプシンのような水素結合の強い水分子が存在しないことを見出した。ハロロドプシン中の塩素イオンは、プロトンポンプとは異なる機構で水和されていることが明らかになった。 3.バクテリオロドプシンと同じファミリーに属しながら、プロトンをポンプしないアカパンカビロドプシンには水素結合の強い水分子が存在しないことがわかった。我々が見出した水素結合の強い水分子の存在は、プロトンポンプ機能と密接な相関をもつことが示唆された。
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Research Products
(13 results)