2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04F04476
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 信之 東京大学, 海洋研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YANG Jian 東京大学, 海洋研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 有機スズ化合物 / 重金属 |
Research Abstract |
岩手県大槌町にある東京大学海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センターに滞在し、冬季、三陸沿岸に来遊するイシイルカを調査し、肝臓、腎臓、肺臓、胃、腸、筋肉、脂肪、骨などの部位から必要な研究試料を採取した。年齢は、歯のセメント質の縞数から推定した。成熟オスは睾丸の組織的所見と睾丸重量の関係より、性成熟を判定した。成熟メスは胎児の有無、必乳の有無、卵巣による精査から性状態を判別した。現在、イシイルカの各部位に蓄積している有機スズ化合物を分析中である。イシイルカ体内に蓄積している重金属類については、Marine Pollution Bulletin, Vol.48:1122-1129(2004)に発表したので、その概要について次に示す。 イシイルカ各個体に蓄積している重金属濃度を比較し、体内分布特性を明らかにした。また、母親の肝臓とその胎児に蓄積している重金属類(Zn,Cu,Se,Mn,V,Hg,Cd,Ag)の分布特性を調査し、体内における重金属類の存在形態を究明した。特に、細胞内分布を詳細に調査した結果、大部分の元素はcytosolに存在していることが明かになった。母親の肝臓では、Zn,Mn,Hg,Agは高分子量の基質に、SeとVは低分子量の基質に存在しており、CuとCdはメタロチオネインと結合していた。一方、胎児では、Zn,Mn,Hg,Se,Cd,Agは高分子量の基質に、Vは低分子量の基質に存在しており、CuとAgはメタロチオネインと結合していた。このように、母親と胎児の間では、分布傾向は非常に類似しているが、幾つかの重金属(Cd,Se,Ag)では存在形態は多少異なっていた。これらの重金属は胎盤を通じて母親から胎児へ移行することから、この存在形態の差違は、胎盤による通過システムが各重金属によって微妙に異なっていることが推定された。
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Research Products
(1 results)