2004 Fiscal Year Annual Research Report
高血圧腎障害における凝固線溶系の変化と繊維化の機序の解明及びそれに基づく新たな治療法の探索
Project/Area Number |
04F04497
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 敏郎 東京大学, 医学部附属病院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHAO J. 東京大学, 医学部附属病院, 外国人特別研究員
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Keywords | アンジオテンシン / ARB / PAI-1 / 高血圧腎障害 |
Research Abstract |
レニン・アンジオテンシンシステム(RA系)は高血圧症における世界的研究の中心となってきた。このシステムは、血圧及び水、電解質の平衡など、様々な腎機能を調節する際に重大な役割を果たしている。RA系は、凝血線溶システム及び組織の繊維化において重要な役割を果たすplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)を誘導する。本年度の研究では、RA系の亢進が腎臓の固有細胞に与える影響をPAI-1に注目して検討した。 1.不死化したラット尿細管細胞株(IRPTC)を培養し、アンジオテンシンII(angiotensin II)投与によるPAI-1の発現の変化を調べた。 Angiotensin II 10^<-7>Mを添加したDMEM+5%FBS+HEPES培養液でIRPTCを37度で24時間培養した。ISOGEN法により細胞のRNAを採取し、逆転写したcDNAを定量PCR方法で、PAI-1の発現を測定した。Angiotensin IIの刺激によって、IRPTCのPAI-1 mRNA発現は増加した(2^<14.4>対1)。 2.Angiotensin受容体拮抗剤(ARB)及びPAI-1阻害剤のin vitro効果 上記の実験と同じく、IRPTC培養液でtelmisartan(組織親和性の良いARB)また化合物A(PAI-1阻害剤の1つ)10^<-5>Mを添加し、24時間37度で培養した細胞のPAI-1 mRNA発現は、正常細胞に比べて、2^<10.6>また2^<8.8>倍増加したが、angiotensin IIの単一刺激により、PAI-1 mRNAの発現は減少した。 3.マウスメサンギウム細胞におけるangiotensin IIの酸化ストレス作用 不死化したマウスメサンギウム細胞であるMES-13を用い、CM_2DCFH-DA標識した細胞内過酸化物の量をフローサイトメトリー(FACScan)及び蛍光microplate readerにより測定した。正常細胞に比べて、angiotensin II 10^<-5>M24時間の刺激により、細胞内過酸化物の増加が見られた。 4.動物生体内の予備実験 Angiotensin II持続投与高血圧腎障害モデルを、浸透圧ポンプをラット皮下に埋め込むことにより作製し、経時的に血圧、腎機能、蛋白尿、組織学的解析を行った。免疫組織学的解析によりAngiotensin II投与した動物の尿細管間質におけるPAI-1の増加を明らかにした。 今後、angiotensin IIによりPAI-1亢進と酸化ストレスの関連について、より詳しい機序の解明を目指している。また、PAI-1阻害剤及び既知のARBにより、高血圧腎障害疾患の改善機転を検討する。
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