2004 Fiscal Year Annual Research Report
低分子G蛋白質Rap1シグナルによる造血細胞の分化制御と白血病化機構の解明
Project/Area Number |
04F04652
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Research Institution | Kyoto University |
Host Researcher |
湊 長博 京都大学, 医学研究科, 教授
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Foreign Research Fellow |
蘇 莉 京都大学, 医学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 低分子G蛋白 / Rap1 / SPA-1 / 造血細胞 / 慢性骨髄白血病 / OcaB / 免疫グロブリンk鎖 |
Research Abstract |
生体内での機能については解析するために、リンパ・造血系組織における低分子G蛋白Rap1に対する主たるGAPであるSPA-1の遺伝子破壊(SPA-1-/-)マウスは、これまでの解析から活性化型Rap1の蓄積により、(1)T細胞の機能不全に基づく免疫不全状態に陥ること、(2)多能性造血幹細胞を含む未分化造血細胞の増殖亢進が起こり、その後生後1年〜1年半でほぼ全例において慢性骨髄性白血病をはじめとする多彩な白血病を発症することが明らかとなっている。今回の研究からさらにSPA-1-/-マウスでは加齢に伴う腹腔B1細胞数の増加、二重鎖DNAや赤血球に対する自己反応性抗体の産生、さらには免疫複合体の腎糸球体沈着による糸球体腎炎といったヒト全身性エリマトーデス(SLE)モデルマウスであるNZBマウスに酷似した自己免疫疾患状態に陥ることが新たに確認された。SPA-1-/-マウス由来骨髄細胞より樹立したB1細胞株はIgMを分泌し、SCIDマウスに移入するとヒトB細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)に酷似した病態を発症するが、SPA-1を戻し活性型Rap1消失させたB1細胞株ではIgM分泌が減少するとともに白血病原性が消失した。この分子機構を解析するために両者の間でDNAマイクロアレイ法による遺伝子発現パターン解析を行ったところ、前者においてB細胞特異的転写因子の補助因子であるOCA-B分子の発現が顕著に上昇していることが明らかとなった。このOCA-B発現上昇により免疫グロブリンk鎖の再編成に異常が生じるとともに軽鎖遺伝子編集による自己反応性B細胞の不活化機構が損なわれるため、自己反応性B細胞が選択をくぐり抜け成熟し、腹腔B1細胞へと分化することが、上記の自己免疫疾患発症につながっていることが明らかとなった。
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