2004 Fiscal Year Annual Research Report
有機分子集合体薄膜中の電子状態特性と分子間静電分極の研究
Project/Area Number |
04F04769
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 直樹 京都大学, 化学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MURDEY Richard J. 京都大学, 化学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 有機半導体 / 薄膜 / 電子構造 / 空状態 / 逆光電子分光法 / 界面 / 銅フタロシアニン / フッ素置換 |
Research Abstract |
次世代の分子素子に期待される多様な機能の実現に向けて、有機半導体の基礎・応用研究にとって有用な分子を多彩な物質の中から選び、その構造と電子構造との相関に主眼を置き、主として蒸着薄膜やその電極界面の電子状態の特性を電子分極効果などに注目しつつとらえることを代表者の研究室では進めている。分担者もこのような研究に強い興味を抱いて研究室に参入し、分子内電荷分布に特徴をもつ系をはじめとして従来しばしば採り上げられてきた分子よりさらに"個性的"な分子に着目して、それらの集合体の電子構造について光電子分光法を主法とする研究を年度の後半から開始した。具体的には、有機半導体の価電子状態の電子構造を紫外光電子分光法で観測した経験をもつ分担者は、空状態の電子構造を直接的に観測する逆光電子分光法にも強い関心を抱いており、自作装置によってそれが可能な当研究室でまずこの手法に習熟することから始めた。標準的な試料を用いて十分な観測ができるようになったのち、代表者と相談しながらその測定回路の一部について改良も行った。その上で、有機半導体では少数派とされる電子輸送型半導体としての特性が報告されていながらその電子構造は十分解明されていないフッ素置換銅フタロシアニンを採り上げ、無置換、8置換、16置換の分子について、薄膜の空状態の電子構造をその装置を用いて入念に観測した。異なる試料相互についての比較のほか、各試料について金属基板上に膜厚を少しずつ変えながら行った観測結果の比較も行い、フッ素置換の効果、試料ごとの薄膜形成の相違、電子構造の特徴、界面での電子準位挙動などについて議論しうるデータを取得した。現在、これらの情報を整理して次段の研究に備えつつある。
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