2005 Fiscal Year Annual Research Report
有機分子集合体薄膜中の電子状態特性と分子間静電分極の研究
Project/Area Number |
04F04769
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 直樹 京都大学, 化学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MURDEY Richaed J. 京都大学, 化学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 有機分子集合体 / 薄膜 / フロンティア電子状態 / 電子構造 / 光電子分光法 / 界面 / フタロシアニン / ペンタセン |
Research Abstract |
分子間にはたらく静電分極の寄与を踏まえつつ、有機分子集合体の薄膜中や界面での電子状態特性を捉えることを目指した研究を進めている。前年度の終わりに、有機半導体で少数派に属する電子輸送型半導体特性を示すフッ素置換銅フタロシアニンを採り上げ、無置換、8置換、16置換の分子(それぞれCuPc、Cu(F_8Pc)、Cu(F_<16>Pc))について、薄膜のフロンティア電子構造(=エネルギーギャップ直上直下の電子構造)の観測に着手したが、今年度はそれをさらに進めた。各試料の蒸着薄膜を超高真空中で室温の蒸着金基板上に調製し、電子構造のその場測定を価電子状態について紫外光電子分光法(UPS)、空状態について逆行電子分光法(IPES)で行った。UPSスペクトルから固相のイオン化エネルギー閾値(I_s^<th>)と仕事関数(φ)、IPESスペクトルからは固相の電子親和力閾値(A_s^<th>)とやはりフェルミ準位(E_F)を決定した。フッ素置換数の増加に伴い、I_s^<th>とA_s^<th>を与える準位がいずれも約1.2eV安定化するため、電化輸送のギャップエネルギー E_G=I_s^<th>-A_s^<th> はほぼ一定に保たれることが分かった。IPESの膜厚依存測定から、フッ素置換により空状態は安定化するが、A_s^<th>準位と基板のフェルミ準位とのエネルギー差は三種の物質で大差なく、デバイス特性に深く関わる電子注入障壁はフッ素置換により変わらないことが明らかになった。さらに、有機エレクトロニクスの研究で研究例の多いペンタセンに注目し、SiO_2基板と金基板上の蒸着薄膜の空状態をIPESと低速電子透過分光法(LEET)により測定した。両膜のIPESスペクトルはピークの位置、強度、線幅に違いを示した。この結果は、現在さらに解析を進めているが、分子配向や充填構造の違いがペンタセン薄膜の空状態の電子構造に及ぼす差異を初めて捉えた例と考えられる。
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