2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本のマス・メディアと大衆文化における韓国イメージの研究
Project/Area Number |
04F04785
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
井上 雅雄 立教大学, 経済学部, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEE Hyangjin 立教大学, 経済学部, 外国人特別研究員
|
Keywords | 韓流ブーム / 大衆文化 / ファンダム / ペ・ヨンジュン / 越境的文化行動 / ヒステリー |
Research Abstract |
研究実績 (1)申請者は本研究の期間中に行った約300人のアンケート調査と約80人に対するインテンシヴな面接調査を完了し、現在テキスト分析を中心とした研究報告を執筆中であり、既に4本の論文を研究成果として発表し、さらに4本を執筆中である。この執筆中のものには岩波新書が含まれる。以上の調査研究から明らかとなったことは、次の通りである。 日本における韓流ブームは、中年女性たちによるある種のサイバー文化反乱と位置づけることができる。彼女たちは、家庭や職場という既存の生活枠を飛び出し、広範な社会的ネットワークを形成しつつ互に交流することで、起伏に乏しい平凡な日常を精神的・物的にも超えようとしている。この越境的文化行動は、高度大衆消費社会の重圧のもと、グローバライゼーションとローカライゼーションの同時多発的な進行とによって変化していく政治的・社会的・文化的環境条件に適応するための、自己救済的な努力といえよう。彼女たちの日常から喚起されるある種の喪失感、あるいは願望に伴う"ヒステリー"を癒す遊びとしての韓流は、自己実現・自己回復に向けた意志的な取り組みであり、アイデンティティの表現なのである。彼女たちは、「見えない市民」としてプライベートな空間に留まることを拒み、自分の存在と欲求を表出するために文化的市民権を求めていると解釈できよう。彼女たちにとって韓流文化の消費は、現実が満たせずにいる自己の欲求を充足させ、充実した生のあり方を示してくれるものである。それはまた独自の政治的インプリケーションをもつものであった。 (2)学会活動としては、2005、2006年度の「アジア学」学会(於米)で、研究の中間的成果を発表するとともに、2006年の7月には「インターアジア・カルチュラル・スターディズ」学会(於東京)および立命館大学、東京大学、同志社大学で開催されたシンポジュームで各々報告した。また立教大学では「誰のための『韓流』か」と題した講演を行った。
|
Research Products
(7 results)