Research Abstract |
地震波トモグラフィーは,地球上の火山のうちのいくつか,特に大洋内に分布する火山島などは,コア-マントル境界から上昇するマントルプリュームに起源を持っていることを示している.しかし,これらの火山から噴出した火山岩が,コア-マントル境界から由来した物質を含んでいるかについての,地球化学的な証拠は乏しい.これまでに,白金-オスミウムの放射壊変によるオスミウムの同位体変化,鉄の濃度などを用いて検証が試みられたが,万人を納得させるようなデータは提出されていない.本研究では,コアとマントルで同位体比の差があると予想される,タングステン同位体比トレーサーを用い,この検証を図った. 特別研究員はカナダの研究者からアフリカ,カナダなどのカーボナタイト試料などを収集するとともに,受入教官もヘリウム同位体から地球深部起源であることが明らかになった,グリーンランド産のキンバライト試料を収集した. 本研究で開発したタングステンの精製法,ICP質量分析計を用いたタングステン同位体比測定法を用いて,カーボナタイトなどの試料が含むタングステンの同位体比分析を行った.その結果は,コア-マントル相互作用を示すタングステンの同位体比の変化は検出できなかった.測定精度を考慮すると,コア物質の寄与は1%以下である.この理由として,マグマがコア-マントル境界からの物質を全く含んでいないか,あるいは,コア-マントル境界での相互作用を経験したが,その後マントルを上昇中にコアのシグナルが希釈されてしまったことが考えられる. 現在,アフリカ産のカーボナタイト試料についての結果についての投稿論文を準備している.グリーンランド産のキンバライト試料については変質を受けて二次的な作用の影響の可能性があることが明らかになったため,より新鮮な試料の提供を求めているところである.
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