2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J00027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 哲史 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 数論幾何 / ガロワ表現 / ウェイト・モノドロミー予想 / P進一意化 / リジッド解析空間 / 志村多様体 / ラングランズ対応 / ハッセ不変量 |
Research Abstract |
私の研究の目的は,代数幾何学・リジッド解析学・表現論等の様々な手法を組み合わせて,志村多様体の悪い還元の構造を解明し,そのコホモロジーと保型表現との関係を明らかにすることである.昨年度までの研究で,私は,標数pのモジュラー形式であるハッセ不変量が,高次元ユニタリ型志村多様体のp階数階層上に一般化できることを見出した.昨年度までの研究に引き続き,本年度は,ハッセ不変量の志村多様体の幾何学やコホモロジーへの応用に関する研究を行った. 具体的には,岩堀型のレベル構造を持つユニタリ型志村多様体の,標数p還元の1進コホモロジーを考察した.このような種類の志村多様体は,標数pにおいて悪い還元をもつ.標数p還元は滑らかでも既約でもなく,複数の既約成分が複雑に交わっている.私は,高次元版ハッセ不変量を用いることにより,既約成分の個数や,その交わり方を決定した.そして,その結果を,ラポポート・ジンクの重さスペクトル系列やクローゼルによるユニタリ型志村多様体のコホモロジーの消滅定理を組み合わせることで,岩堀型のレベル構造を持つユニタリ型志村多様体の1進コホモロジーに関する公式を得ることができた. このようにして得られた公式は,ユニタリ群に対するジャッケ・ラングランズ対応やテータ関数論などの,保型表現論への興味深い応用を持つと期待される.実際,古典的なモジュラー曲線の場合には,そのような応用が可能であることが知られている.しかし,私が本年度に得た高次元版の公式は,高次元特有の様々な事情により,見かけが複雑なものになってしまっており,現時点では応用可能ではない.応用可能な公式を得るためには,幾何的な議論により,公式のさらなる単純化を行う必要があると思われる.これは将来への課題である.
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