2005 Fiscal Year Annual Research Report
中国魏晋南北朝から唐にかけての文学における知覚表現と叙景について
Project/Area Number |
04J00038
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堂薗 淑子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国 / 南朝 / 文学 / 謝霊運 / 鮑照 / 山水詩 / 叙景 / 南嶽魏夫人 |
Research Abstract |
本年度は、謝霊運山水詩の円熟期とされる始寧隠棲期の作品を考察対象とした。この時期の詩は、個々の景物に対する思慕や執着、またその時々の心の動揺などが表されたものがある一方、自らが築いた山居を詠う詩では、日々感知される個々の対象に執着しない心のあり方が表されている。佛教の頓悟思想を背景に持つこの時期の詩境は詩によって異なることを、知覚表現に着目して分析することによって明らかにした。この点については、年度末に提出した博士論文の第二章にまとめた。 次に謝霊運の山水描写の特徴について、同時期の詩人である鮑照と比較しながら考察した。謝霊運は山水を描くに当たって、それまでの詩人とは異なり、自分にとってのみ特別な意味を持つ場所を選んだ。自らの動きに沿って外界を描き、山水と自己とのふれあいを一回の体験として描き出している。知覚表現は、山水描写の中に作者本人の存在感を強く浮かび上がらせる役割を果たし、作者がいかなる感覚、感情で個々の対象と接したのかを表すために使われている。一方鮑照の山水詩では、いついかなる状況で山水とふれあったのかという個別的な事柄は示されていない。山水描写の中に詩人の存在感はほとんど現れず、神秘的で圧倒的な迫力を持つ山の姿だけが強調されている。自らの動きや視界に沿って外界を切り取って描くということをしないという意味において、鮑照の山水の描き方は謝霊運とは対照的である。この点は、博士論文の第三章で述べた。 また近年南京で出土した「王建之妻劉媚子墓誌」の中に、茅山派道教の開祖とも言われる南嶽魏夫人の長子の名を発見したため、一家と琅邪の王氏との関係を論文「南嶽魏夫人の家族と琅邪の王氏」にまとめた。墓誌本文と「述書賦」注の記載等を照らし合わせることによって、夫人の伝記に長子として名の見える劉璞が実在したことを確認し、夫人の二子が琅邪の王氏とそれぞれ婚姻関係を結んでいたことを指摘した。
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Research Products
(2 results)