2004 Fiscal Year Annual Research Report
プラトン後期思想の研究-『ピレボス』の文献批判を中心に
Project/Area Number |
04J00047
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
早瀬 篤 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | プラトン / ソクラテス / ピレボス / 快楽論 |
Research Abstract |
今年度は主として英国ダーラム大学のロウ教授のもとでResearch Associateとして在外研究を行った。主要な成果は事前に準備しておいたプラトン『ピレボス』の純粋な快楽についての英語論文の草稿をロウ教授のコメントにもとづきながら大きく手を入れつつまとめ直していること(発表は来年度になる予定)とその過程で該当箇所についてのギリシャ語の読み方について議論を行い、文献学的な研究についての様々な有益な知見を得たことである。『ピレボス』の純粋な快楽についての私の見解は次のようにまとめられる。つまり、プラトンは純粋な快楽と混合された快楽をそれぞれ「混合されたもの」および「無限定なもの」という形而上学的な分類に割り当てるのであるが(Phlb.52c-d)、このことが示していることは、純粋な快楽はそれ自体を目的とする過程の中で存在し、混合された快楽は身体の回復過程の中で存在するということである。したがって、純粋な快楽は身体の調和状態と同様、ある過程にとっての「目的」であり、善きものである。この私の解釈がもとづくテクスト分析は、現在有力なフレーデなどに代表されるすべての快楽は「目的」へ至る「生成過程」にすぎず、したがって善きものではないという解釈を退けるものである。今年度はそのほかに、内外の教授による講義という形式で行われるダーラム大学での研究会に積極的に参加し、英国での古代哲学研究について様々な知見を得ることができたほか、特にボーイズストーン博士のMiddleplatonismについての講義等を参考にしつつ、アリストテレス以降のプラトン倫理学について反応を研究し、比較考察にもとづく『ピレボス』の持つ倫理学的意味を追求している。これらの諸成果については日本に戻った後にまとめることを課題としたい。
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Research Products
(1 results)