2004 Fiscal Year Annual Research Report
戦中・戦後の日本におけるナショナリズム論の形成と展開
Project/Area Number |
04J00073
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平野 敬和 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蝋山政道 / 昭和研究会 / ナショナリズム論 / 東亜協同体論 / 近代の超克 / 丸山真男 / 市民社会派 / 帝国日本 |
Research Abstract |
初年度の今年度は、蝋山政道と昭和研究会の知識人を中心に、その思想が戦中と戦後の時代情況の中でどのような位置を占めたのか、という問題について考察した。その際、戦中・戦後の日本におけるナショナリズム論を一国史的視点で分析するのではなく、とりわけ東アジアとの関係性において問題とするような歴史的視座を設定する目的に基づき、彼らの思想的作業が植民地支配という形をとって繋がれた日本と東アジアの関係を主題化するものであった点に注目した。具体的には、以下の学術論文を執筆した。 (1)「帝国の政治思想-戦中・戦後の蝋山政道と丸山真男-」(投稿予定)では、蝋山と昭和研究会の知識人のテキスト分析を中心に、「東亜協同体論」から「近代化論」への転回過程を跡付けた。同時に、それとは対抗する立場にあった丸山真男など市民社会派の知識人の関心を思想史的に位置付けることを試みた。まず、「東亜協同体論」において示された現代化の課題が、その後「世界史の哲学」とも問題関心を重ねる形で展開された点、そこでは「近代の超克」を掲げて、東アジアに独自の地域秩序を形成することが目指されていた点を明らかにした。次に、丸山など市民社会派の知識人が、戦中から戦後にかけて一貫して「近代の超克」に対抗する立場から、思想的作業を展開した点に注目した。その上で、そうした言説配置を意識しながら、当該期におけるナショナリズム論の特徴を分析した。 (2)以上の研究成果とともに、先に提出した博士学位論文を手直しして、学術書として刊行する準備作業を進めた。そこでは、日本思想史研究とナショナリズム論の交差を目的として、第一次世界大戦以降、総力戦体制を経て、戦後意識が形成される時期の政治思想に関する研究成果を発表する。具体的には、吉野作造を中心とする大正デモクラシー、蝋山政道と昭和研究会、京都学派と和辻哲郎、丸山真男など市民社会派、竹内好・橋川文三のテキストを取り上げ、それらの思想が戦中から戦後にかけて帝国日本の思想情況にどのように切り結ぶものであったのか、という問題について考察を進めた。
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