2005 Fiscal Year Annual Research Report
戦中・戦後の日本におけるナショナリズム論の形成と展開
Project/Area Number |
04J00073
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平野 敬和 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 丸山眞男 / 竹内好 / 橋川文三 / ナショナリズム論 / 戦争体験 / 日本浪曼派 / 戦中派 / 原爆体験 |
Research Abstract |
今年度は、丸山眞男・竹内好・橋川文三のテクスト分析を中心に、戦中から戦後にかけてのナショナリズム論の思想史的位置付けを試みた。その際、戦争体験がどのようなかたちで戦後の思想的作業を規定したか、という問題に注目して、彼らのテクストの比較検討を行なった。具体的には、以下の学術論文を執筆した。 (1)今年度発表した論文「ロマン派体験の思想史-橋川文三『日本浪曼派批判序説』を手掛かりに-」は、日本思想史学会大会での発表の成果を受けて、執筆したものである。橋川の『日本浪曼派批判序説』は、戦後初めての本格的な日本浪曼派批判の成果としてだけでなく、「戦中派」の戦争体験の思想的意味を考える上でも、重要なものである。本論文では、橋川のナショナリズム論や国体論など日本政治思想史研究との関連を明らかにすると同時に、彼の戦争体験論など同時代の思想状況に関する考察について、丸山眞男・竹内好のテクストとの比較検討を行なった。 (2)次に発表する予定の論文「丸山眞男と原爆体験」は、丸山が戦争体験の思想化を試みたことの困難性について、とりわけ1950年代後半以降語られた彼の原爆体験に注目したものである。戦後の丸山は、軍隊体験など自己の戦争体験の思想化を試みる一方で、原爆体験の思想化が欠落していることを認識していた。本論文では、丸山における原爆体験が、彼の中で戦中と戦後の切れ目を見出すことができない問題であるがゆえに思想化されなかったことを明らかにした。また、丸山の主著である『現代政治の思想と行動』や『戦中と戦後の間』の解題を執筆することを通して、戦中から戦後にかけてのナショナリズム論の展開について、思想史的な見通しを示した。以上の研究を遂行するにあたり、補助金を用いて、ナショナリズム論、戦争体験・戦争責任論に関する文献を多数購入した。
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